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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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離されるが、恐る恐ると再度伸ばされ、指先が士郎の頬をなぞる。
 
「ん? ……何だ?」
「いえ……その、何かその……辛そうに見えて……何か……あったのですか」
「……君は……優しいんだな」
「ぁっ……」

 顔を上げた士郎は、心配気に見上げてくるカトレアに小さく笑いかける。士郎の笑みを見たカトレアの身体がビクリと震えた後、指がゆっくりと離れていく。離れていく指先に、士郎は頬を掻きながら目を細めた。

「しかし、俺は君に嫌われていると思っていたのだが」
「えっ? 嫌われてる? どうしてですか?」
「いや、どうにも避けられているように感じていたんだが……違うのか?」
「そ、そういうつもり……じゃ……ないんですが」

 わたわたと顔の前で両手を振るわれる腕が、次第に弱くなり、遂には力なく下ろされる。
 視線も下がり、濡れた黒い地面を見つめ始めていたが、再度ゆっくりと頭が持ち上がっていき、士郎に顔が向けられた。
 
「ん?」

 士郎の眉根に皺が寄る。
 弱々しく迷うように揺れていた瞳が、今は真っ直ぐとこちらを見つめてくる。向けられる視線には、今まで向けられていたオドオドとした怯えが見えず、何か決意した光が見えた。

「……あなたは何故、生きていられるのですか」
「なに、を……君は言って――」 

 カトレアの言うことがわからず、思わずと士郎が声を上げるが、カトレアは構うことなく言葉を続ける。

「辛いはずです、悲しいはずです、痛いはずです……一つだけでも壊れてしまいそうなものをいくつも胸に抱いているのに、あなたは何故生きているのですか……生きて……いられるのですか」
「っ……君は……やはり……」

 士郎が探るような目をカトレアに向ける。

「読めるのか……人の心を」
「……少し……違います」

 士郎の言葉を、カトレアは否定しなかった。
 士郎の探るような目を真正面から受け止め、カトレアは微かに頷く。

「ただ……感じるだけです。はっきりとはわかりません、ただ、そう……ただ何となくわかるだけです」
「何となく……か」
「……でも……あなたは違いました」
「違う……とは」

 カトレアの両手が伸ばされる。士郎の頬をカトレアの両手が挟みこむ。 
 
「? ちょ、何を」
「はっきりと……感じ取れたのです……こんなこと、初めてなんです。軋み、悲鳴を上げるあなたの心はボロボロです……なのに……あなたは」

 士郎を見つめる瞳が涙に潤んでいる。

「あんなに優しく笑えるのですか」
「…………」

 カトレアの問いに、士郎は何も答えない。
 二人の間に沈黙が満ち、辺りには風が葉を揺らす音だけが広がっていた。
 
「――ぁ……」
「ん?」

 顔を上げ、何かを言
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