第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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う……。
「俺……は……俺、はッッアアァッ!!」
怒号と共に爆風が起きる。
未だ空に留まっていた泥が吹き飛ばされ、木々がミシリと悲鳴を上げた。
「つら、い……かなし、い……い、たい……な、んで……何で……あなたは耐えられ、るのですか」
剣士が剣を振るう度に起こる暴風と共に、男の心が突き刺さる。剣がひと振りされる度に、様々な痛みが突き立てられ、カトレアの心を男の傷跡が染めていく。
胸を抑えた手を握り締め、身を縮め眉根に皺を寄せた時、脳裏に一つの情景が浮かんだ。
それは……。
光を遮るものが全て剥がされ、辺りに柔らかな星光が満ちる。
両手に持つ双剣を地につくギリギリで止めた剣士の姿を、暴風により開けた空から降り注ぐ光りが浮かび上がらせた。
「……ハァッ……ハァッ……ハァ……はぁ……っ……」
剣士は肩を微かに上下させている。
荒い呼吸が耳に触れるが、直ぐに元の正常な呼吸に戻っていく。
そして、剣士は空を仰ぎ……
「っ! 誰だッ!?」
前振りもなく顔がこちらを向き、誰何の声が上がった。
その鷹の様に鋭い目に、がちりと捕らえられ、逃げることが出来ない。膝から力が抜け、倒れ掛かる身体を手を添えた木で支えようとするが、ふらついた足は身体を剣士の前にさらけ出してしまう。
「す、すいません」
鳶色の目を大きく見開き、カトレアは身を守るかのように胸の前に寄せられた手は小さく震わしている。
「ちょ、ちょっと散歩をしていたのですが……その、ぐ、偶然ここを通り、掛かって……その……それで……」
途切れ途切れに言い訳のような言葉を呟くカトレアに、剣士……衛宮士郎が声を返す。
「……君は」
地に落ちた枝葉を踏みながら、士郎はカトレアの元へと歩き出す。カトレアは近付いてくる士郎に一瞬ビクリと肩を震わせたが、結局その場から動くことはなかった。目鼻の形が見える距離で士郎は立ち止まる。
「……修行をしていたのですか?」
「あ、ああ。まあ、そう、だな」
カトレアの視線が士郎からその後ろに移動する。
導かれるように士郎の視線もカトレアの視線を追う。目に映るのは変わり果てた森。
「……すまない」
「い、いいえ構いませんが。その、すごいんですね」
「……すごくはないさ」
士郎の目が手に持つ双剣を見下ろす。
噛み締めた歯の隙間から、吐き捨てるように言葉を呟く。
士郎の様子に気付いていたカトレアだったが何も言わなかった。
代わりに手を伸ばす。
よろよろとよろめく足を動かし、士郎に近づくと、腕を伸ばし俯く士郎の頬に触れた。
震える手が士郎の頬に触れる一瞬、パッと
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