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剣の丘に花は咲く 
第六章 贖罪の炎赤石
第二話 姉妹
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向に向かって歩き出す。朝露で濡れ、泥濘んだ柔らかな土の上を歩くうちに、聞こえてくる音は大きく、そして多くなっていく。

「これは……もしかして……」

 音源に近づくにつれ、音の形が明確になっていく。
 ハッキリと形となっていく音に、カトレアは覚えがあった。それどころか、気付けば小さな頃から身近にあった音。母親である公爵夫人が時折響かせるそれは……。

「……すご……い」

 ざらつく木に手を添え、顔を向けた先にあったのは、ふた振りの剣を振るう剣士の姿。枝葉の隙間から、微かに差す星明かりに照らし出された剣士は、ゆっくりと緩やかに動いているように見えるが、その実、瞬きした瞬間、視界から消えてしまうほどの速さで動いている。剣士が持つふた振りの剣もそうだ。空に絵を描くように振るわれる双剣は、複雑に動き、振るわれる腕が絡まらないか、見ているとハラハラしてしまう。

 でも……とても綺麗……。

 聞こえるのはただただ、双剣が空を切り裂く音だけ。濡れた地の泥が泥濘む音も、湿った土が落ちる音も……何も聞こえない……。
 それは、まるで幻……。
 剣と共に行われる幽玄な舞い。
 暗い森の闇の中、剣と共に踊る彼は酷く現実感がなく、それは、まるで夢を見ているかのようで……。

 剣士が不意に立ち止まる。

「……信じる……か」

 剣を持ち立ち尽くしていた剣士から声が漏れ、幻が急に現実味を帯び始め……暴風が吹き荒れた。

「……信じていた……ッ!」 

 悲鳴に似た声と共に、再度剣が振るわれ始める。
 始まったのは……破壊。                                    剣が振るわれる度に、破壊させる大地。
 剣は何にも当たっていない。
 にもかかわらず、双剣が振るわれる度に地が裂け、ズッシリと地に根を張る木々が揺れ葉が散り、枝が折れる。
 
「……俺は……ッ! ……ッ!」 

 剣士が泥濘む大地を踏み込むと、大量の土砂が空を舞い、泥が雨のように降り出す。
 泥が空を覆い、森の中にか細い星明かりさえ消えるが、カトレアが剣士の姿を見失うことはなかった。
 何故ならば……

「……光り、が」

 闇の中に、鈍く輝く光が生まれていた。                             光はギラギラと輝き、闇を照らし出す。                    

「……ッ!! 守られてばかりだッ!!」

 光は線を描く。
 残光が消える一瞬のうちに、闇に光の絵が描かれる。

「……っぅ……ぁ」

 剣士が何かを叫ぶたび、カトレアは胸を抑える。
 刃物が突き立てられるかのような鋭い痛みが走り、喘ぐような呼吸に小さく速く変化していく。
 壊れる……壊れてしま
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