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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#13
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「リゼ姉さん…!」
「ッ!」

 アーシャが叫び、ハルドが息を呑む音が聞こえる。

 不意に、巨大な───まるで光の刃のようなものが、魔獣の右手を襲った。魔獣の右手はボロボロと崩れ落ちて、肘から下はなくなる。

(今のは────魔術か…?)

 経験上、何度も魔術を目にしたことはあったが────あんな強力な魔術は見たことがない。

 それが放たれた方向を見遣ると、魔獣の方へ駆けていく青年が二人いる。その一人、銀髪らしき青年はアレドだろう。

(まさか…、あれはアレドが────?)

 魔術は、魔術陣さえあれば誰でも行使することはできるが────あの規模の魔術を撃つとなると、相当、魔力を持っていなくてはできない。

 もし、そうだとしたら────ルガレド皇子は、剣術だけでなく、魔術に関しても才覚があるということになる。

(まさに────Sランカー“双剣のリゼラ”と並び立つことができる存在というわけだ)

 魔獣の方に視線を戻すと、いつの間にか集まっていたアレドの配下が魔獣の左腕を押さえ込んでいて、リゼラが魔獣の首目掛けて跳んだところだった。

 魔獣が怒号を上げて、リゼラに頭突きをかます。

 リゼラは剣を振るったが魔獣の額が当たって、落下して────アーシャとハルド、それにガレスの周囲にいる冒険者たちが短い悲鳴のような声を漏らした。

 アレドが魔術らしきものを展開し、それを足場にリゼラが再び跳び上がった瞬間、魔獣の左肩越し───ガレスたちの真正面から夜を朝に一気に塗り替えてしまうような眩い陽光が差し込み、辺り一帯を満たした。少しの間、リゼラと魔獣の姿を見失う。

 刺すような光が柔らかなものに変わり、ガレスが周囲の光景を認識できるようになったとき────リゼラが剣を振り抜いた。魔獣の頭が宙を舞い、リゼラの身体がぐらりと傾ぐ。

 ケガでもしているのか、いつもと違って、リゼラに着地しようとする様子がない。その上、リゼラに覆いかぶさるように魔獣が倒れ込む。

「リゼ姉さん…ッ!」
「リゼラ様…!!」

 アーシャとハルドが悲痛な声音で叫び────駆け出すが、間に合うはずもない。ガレスも思わず駆け出そうとして、左足に痛みが走った。

「リゼ姉!!」
「リゼ姉ちゃん!!」

 人垣を掻き分けて最前列に躍り出たラギとヴィドが、やはり悲痛な声で叫んだ。

「リゼさん…!」
「おい、嘘だろ?!」

 冒険者たちも、口々に何かしら叫んでいる。

「あっ!」

 誰かが何かに気づいたような声を上げた。リゼラの許へ奔る人物がいる。勿論、アレドだ。

 魔獣の死体をアレドの配下の者たちが逆側に押し倒し────アレドが両手を広げてリゼラを受け止める。

 冒険者の
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