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冥王来訪
第三部 1979年
戦争の陰翳
柵 その3
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な顔の内に、スースロフは、抑えがたい怒りを燃やしていう。
「世界の現状を見ろ!
今からのソ連は、誰が書記長になっても、安穏としていられる情勢ではない」
 BETA戦勝利のためとはいえ、ゼオライマーに肩入れする参謀総長。 
味方とはいえ、ソ連の秩序を乱すものに対し、スースロフは必然な憤怒をおぼえるのだった。
「近い将来に戦争が終わった後、必ずや世界的な大不況にソ連も飲みこまれる」
 じっと、参謀総長は、第二書記の顔色を見つめた。
「その中で、お前は何ができる!
ソ連という国家を、ロシア民族を存続させる明確な意思を持っているのか!
政権を握るものとして、強固な理念や自信があるか。 
明確な意思表示ができるか」
 スースロフは一旦言葉を切って、立ち上がる。
参謀総長の顔を(さげす)むごとく、恨むごとく、じっと見てから答えた。
「政権を、ただの甘い役職と思うんじゃない!」
 そういって、スースロフは政治局会議の場を後にした。
第二書記がいなくなったのを見計らって、検事総長が言い放った。
「老醜か、見識か……」
「いずれにせよ、有象無象がどう戦うか、でしょう……」
 参謀総長は、勤務服(キーチェリ)の内ポケットから愛用する口付きたばこの白海運河を取り出した。
「私たちの様な青二才の小僧も、あの老獪な第二書記に……」
 そして言葉を切ると、タバコに火をつける。
混紡サージ生地製の、深緑色の夏季勤務服(キーチェリ)を着た顔から、香りのある煙がゆるく這った。

 
 場面は変わって、米国バージニア州ラングレーにあるCIA本部。
一人の分析官が資料を携えて、長官室を尋ねていた。
「長官、見てください」
 分析官は、さきほどNASAから届いた資料を長官に見せた。
「先日、NASAがバーナード星系方面から、太陽系への怪電波を観測しました。
詳しく解析したところ、ソ連の月面攻略作戦とほぼ同時刻でした」
 長官は、話のあらましを聞いて、表情が変わった。
「なるほど、とても偶然とは思えんな」
 彼は米国の首脳陣の中で、ゼオライマーがもたらしたひと時の平和に惑溺(わくでき)しない人物だった。
「バーナード星系は、たしか地球と似た環境の星が存在する惑星だ」
「地球と似た星?」
「そうだ。
地球から6光年先にあるヘビつかい座にあるバーナード星系からは、生物が発生する条件がそろっているという。
フォン・ブラウン博士が進めていた、例のバーナード星方面への移住計画で、そういった分析結果が出されている」
「まさか、6光年の距離を?」
 当然そうだという口調で、長官は続けた。
「火星にいたBETAは、こともなげに2億3000万キロの距離を侵攻してきた。
彼等の恐るべき能力なら、バーナード星系が拠点と考えてもおかしくは
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