第三部 1979年
戦争の陰翳
柵 その2
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とともにKGBが主催する幹部会合に呼ばれたという。
「そこでソ連の科学者は、非炭素、早く言えば機械の肉体に人間の脳や内臓を埋め込む案を思いついたようです。
それがソ連のサイボーグ人間計画で、2メートルの強化外骨格の中に脳を埋め込む段階まで進んだらしいのです」
ダウムは言葉を切ると、フィリップ・モリス社のタバコ、マルボーロに火をつけた。
マルボーロのココアを混ぜたタバコ葉と燃焼補助剤の塗られた巻紙の匂いが、一面に広がる。
「サクロボスコ事件の前の話だから、今は終わった話だと思っていたが……」
鎧衣は、紫煙を扇ぐように手を振った。
彼はタバコ葉の匂いは好きだったが、燃焼補助剤の入った巻紙の匂いが嫌いだった。
だから紙巻きタバコを吸う時は、麻紙で巻き直すか、バラシてパイプに詰めることが多かった。
「脳髄と神経系統が、超々ジュラルミンとチタンの合金の体に収められていると考えてもらえばいい」
「そのサイボーグとは、早く言えば人間の脳を持ったロボットという感じかね」
「そうなりますな」
立て続けに、マルボーロの箱から新しい煙草を出して、火をつける。
ダウムは努めて冷静になるべく、紫煙を燻らせることにした。
「ソ連では、脳以外の機能を人工物に置き換える計画を進めていました。
ゼロ号計画、ナーリと呼んでいた物です」
ナーリとは、ロシア語の数字のゼロを指す言葉で、一般的にНольとして知られる単語である。
何故ゼロ計画なのかというと、人体由来ゼロ、炭素素材ゼロという改造人間を作る計画だったからだ。
「ただし、ソ連の技術では脳髄と神経系統を電子計算機に繋ぐ技術がありませんでした。
そこで、穂積という男に近づき、最新鋭の演算処理能力をもつ電子計算機を手に入れようとしているのです」
鎧衣は、その話を聞いていて思い当たる節があった。
霧山教授から聞いた、非炭素構造疑似生命体の話である。
霧山は、京都大学で非炭素構造疑似生命体の研究をしている人物だった。
ソ連での戦術機の損失を調査している内に、国連のオルタネイティヴ計画に関係していることに気が付いた。
BETAが戦術機を操縦する衛士に拒否反応を示すという、仮説を立てていた。
そこでBETAは炭素生命体に敵対するので、高性能の電子計算機を用いた人造人間の開発を進めるべきである。
そのように表明した学者であった。
「だからソ連科学アカデミーでは、ゼオライマーの秘密を欲しがっていたと」
ゼオライマーに積まれたスーパーコンピューターは、日本政府でも解析不能だった。
実は検査する際に、ゼオライマーの頭脳である高性能電子計算機が外されていた為である。
マサキが秘密の漏洩を畏れ、氷室美久がアンドロイドであることを隠していたからだ。
美久は人間の成人女性の姿
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