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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第228話:意志はそこにある
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低限の様相は呈しているその部屋にはベッドが一つあった。そのベッドの上に居たのは、彼女にとって何よりも大切な1人の眠り続ける少年の姿。
それを見た瞬間、キャロルはそれまで感じていた不安も忘れてベッドの上の少年、ハンスに飛びついた。
「ハンスッ!」
近付いてみると、まだ彼は温かく息もしている。相変わらず目覚めてはいないが、キャロルにとっては彼がまだ生きているという事実だけでも十分であった。
「ハンス……! あ、あぁ、良かった……! 無事だった、ハンス……!」
まるで何年もあっていなかったように、キャロルが彼の手を取り頬擦りし彼の手から伝わる温もりに身を委ねる。あまりに熱心に顔を押し付けるものだから、不意にキャロルの小さな唇がハンスの手に優しく触れる。
その瞬間、彼の手が一瞬確かにピクリと動いた。間違いではない。唇が触れた瞬間、彼の手が感電して震える時のように動いたのだ。それに気付いたキャロルはハッとなって彼の顔を凝視する。
「ハンス……?」
呼び掛けても彼の目は開かない。時が止まった様に眠り続ける彼の姿に、キャロルは朧気だが最近思い出してきた昔の光景を脳裏に浮かべる。
今と同じように、眠り続けて目を覚まさないハンスの姿。その彼を起こそうとして、彼の顔にそっと顔を近付ける自分の姿。
キャロルはその光景を再現する様に、引き寄せられるように彼の口元に顔を近付けていく。そして、あと少しで2人の唇が触れ合いそうになった。
だがあと数pどころか数oと言うところまで近付いたところで、何者かがキャロルの襟首を引っ張ってハンスから引き離した。
「うぁぁっ!?」
「再会を喜んでいるところ悪いが、来てもらうぞ」
キャロルをハンスから引き離したのはベルゼバブであった。キャロルが抵抗するのも構わず、ベルゼバブはそのまま彼女を部屋から連れ出していく。
後に残されたのはベッドの上に寝かされたハンス1人。その彼の手が、何時の間にかキャロルが連れられて行った扉の方へ伸ばされていた。直前までキャロルが彼の手を取っていた為、連れ出される際に引っ張ってそのままになったようにも見えるが、何かがおかしい。
おかしいのだが、それに疑問を持つような者はこの場にはおらず、扉に伸ばされていた手はそのまま力無くだらりと床に向け下がるのであった。
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