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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第112話 辺塞到着
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まで何事も起きないという理想的な一年が送れた場合の計算。哨戒ルートは当然帝国の哨戒ルートとも重なっていて、遭遇戦となれば被害は出る。大概は同規模の哨戒隊が相手とは言え、ローレンソン中佐の第一三〇八哨戒隊のように部隊の過半を失うような不利な状況も発生する。そうなるとローテに穴が開くことになり、半舷休暇の切り上げが行われることになる。そのあたりの管理は第三辺境管区司令部が差配する。

 さらに言えば、エル=ファシル奪回戦のような規模の戦いが辺境領域で発生すれば、隠密偵察に駆り出される。アスターテ星域会戦のように事前にフェザーンからの情報が入るような艦隊規模の戦闘が予想される場合も同様だ。そしてイゼルローン要塞攻略のように辺境領域奥地で複数規模の決戦が行われる場合、さらに主攻略部隊の補給路を支える為にほぼ全ての哨戒隊が、戦略輸送艦隊の護衛に駆り出される。

「近々での艦隊決戦はないって話だ。取りあえず、お前の隊は予定通り四日後。Bコースで回ってくれ。俺の勘では、恐らく敵とは遭遇しないだろう」
「勘でありますか? それまでの遭遇統計から導かれる統計とかではなく?」
「おうよ。勘って言うのもなかなか馬鹿にしたものじゃねぇぞ?」

 積み重ねた経験と僅かな気配察知の両方から導き出される勘はバカにできるモノではない。特に大佐は都合五年、この第三辺境星域管区に勤務している。信じるわけでも頼りにするわけでもないが、オブラックよりはまともにコミュニケーションを取ろうとしているのは間違いないだろう。

「大佐にそう言ってもらえると、少しだけ安心できますね」
「ローレンソンはマトモな奴だったからな。代わりのお前が早々くたばっては俺が困る。なにか問題があれば俺に言え。出来る範囲で協力する。それと……」
 椅子から立ち上がって一度、俺の背後にいるドールトンに視線を向けた後、大佐は手振りして近寄った俺の肩に手を廻すと顔を寄せて囁いた。
「あの副官。アレ、お前の女か?」

 一瞬、回りそうになる首を、僅かに首を傾げるだけにとどめる。一体どうしてそんなことを聞くのか。口には出さず視線だけで大佐に問うと、大佐は右唇を小さく吊り上げて応えた。

「俺がお前と話している間、ずっと俺を睨んでいやがった。生意気な小娘だが美人だし、そういう女は嫌いじゃねぇ」
「……後で厳しく、躾けておきます」
「そうしとけ。俺以外もあんな目を向けてるようだと、ここじゃ長生き出来ねぇからな」

 そう言うと、ドンと強く俺の左胸を大佐は拳で叩く。痛いことは痛いが、尾を引くような痛さではない。ちゃんと加減している挨拶だとわかる。能力的には未知数だが、致死率二〇パーセントの任務をここまで2回半こなしていると考えれば、大佐は全くの無能とも思えない。
 背を向けて手を振りながら大佐が会議
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