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抜擢人事の裏側
第一章
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                抜擢人事の裏側
 いきなりだった。
 ヨハネス=ライツヘルムは神学部の教授に任命された。何と彼はまだ二十八歳だった。
「二十八歳で教授!?」
「我が国の国立大学の」
「これは凄いぞ」
「大抜擢だ」
「こんな抜擢は見たことがない」
「博士号を得たとほぼ同時じゃないか」
「こんなことがあるのか」
 大学の中だけでなくだ。
 学会でも大騒ぎになった、それでだ。
 ある他の国立大学の神学部の教授ハイドリヒ=マッツ初老で白髪で太った大柄な体で黒い目を持つ彼が信じられないといった顔で同僚に言った。
「二十代で教授とはです」
「博士号を得たとほぼ同時に」
「こんなことはです」
 それこそというのだ。
「前代未聞です」
「我が国の学問の歴史でも」
「抜擢も抜擢で」
 さらに言うのだった。
「大抜擢です」
「そう言っていいですね」
「はい、一体です」
 彼はさらに言った。
「どうしてなったのか」
「それを知りたいですね」
「ここで注意することは」
 マッツは同僚に真面目は顔で話した。
「嫉妬ややっかみで、です」
「見ないことですね」
「広く公平に」
「見て」
「そしてです」
 そのうえでというのだ。
「見ることです」
「それが大事ですね」
「はい」
 まさにというのだ。
「それが大事です」
「それでは」
「はい、学者となれば論文なので」
「その論文を見ることですね」
「そうしましょう」
 こう言ってだった。
 マッツは彼の論文を片っ端から読んでいった、それこそ学生時代から博士課程の時の論文までである。
 そうしてだ、彼は同僚にその論文たちを呼んでもらってから言った。
「どう思われますか」
「見事です」 
 同僚は真面目な顔で答えた。
「どの論文も」
「そうですね」
「神学、紙の教えを非常にです」
「理解していまして」
「知識も分析も秀でていて」
「解釈も見事ですね」
「非常によく学んでいる」
 進学というものをというのだ。
「それがわかる」
「素晴らしい論文ですね」
「どれも」
「しかもです」
 マッツはさらに話した。
「神学だけでなく」
「哲学、法学、文学でも書いていますが」
 論文をというのだ。
「どれもです」
「素晴らしく」
「その三つの学問でもです」
「博士号を修得しています」
「西洋の学問には大きな特色があります」
 マッツは確かな声で言った。
「一つの幹があります」
「学問という大樹に」
「神学です」
「キリスト教の神の教えですね」
「それがあります、そこからです」
「他の学問が枝分かれしています」
「科学や医学も」
 こうした理系の学問もというのだ。
「神とは無縁か」

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