第3部
サマンオサ
変化の杖
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たな」
先回りして私の隣に立ったユウリが、ボストロールの顔めがけて呪文を唱えた。
「ラリホー!!」
睡魔を誘う呪文を放った途端、ドラゴンの瞼がゆっくりと閉じた。
すっかり眠ってしまったボストロールは、ズシンと大きな音を立てて倒れ込んだ。そこへ、チェーンクロスから毒針へと武器を持ち換えたナギが迫る。
「メタルスライムには効いたが、姿を変えたてめえだとどうなるんだろうな?」
皮肉を込めた言い回しで、ナギは横たわるボストロールの足めがけて思い切り毒針を打ち込んだ。
『ガハアッ!!』
急所に当たったのか、身体をびくつかせて目覚めたボストロールの鋼の足は、元のトロールの足へと戻った。腕の時といい、どうやらダメージを与えると元の姿に戻るらしい。
いや、別にダメージを与えなくても元に戻せばいいんだ!
「ナギ!! ラーの鏡を!!」
「ああ!!」
ナギも気づいたのか、すでに鞄から鏡を取り出し、ボストロールの顔と胴体に向けていた。
『グアアアアッッ!!』
鏡の効果により、顔と胴体も元の姿に戻ったボストロールは、両腕と足にダメージを負いながらも、こちらをギロリと睨み付けながらゆっくりと身体を起こした。
『この……、たかが虫けらの分際で……!! よくも、よくもよくもよくも!!』
もはや怒りの感情しかない魔物は立ち上がると、巨大な体躯を自ら武器にするかのごとく、物凄い早さで私たちに向かって突進してきた。それは魔王軍四天王としての生き様をまざまざと見せつけられたような気がして、思わず怖気が走ったほどだ。
「ふん。それがお前の散り際の台詞か? 随分と無様な最期だな」
私とナギの前に立ちはだかったユウリが、稲妻の剣を構えて言い放つ。
「せめてもの餞に、俺の最大の力を以てお前を地獄に落としてやる」
その瞬間、ユウリの鳶色の瞳に燃え盛る炎が映し出された。構えた稲妻の剣からは、チリチリと小さな雷のような光が迸っている。
「くらえ!!」
まさしく稲妻のような素早さでボストロールに向かっていくと、ユウリは次々と剣撃を浴びせた。その太刀筋はまばゆい閃光となって、ボストロールの身体を貫いたのである。
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