第3部
サマンオサ
変化の杖
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鳩尾に、突然触手のようなものが打ち込まれた。強い衝撃に、たまらずユウリは後ろに吹っ飛ばされる。
見るとボストロールの腕の先にあった鋭い爪はなくなり、代わりにホイミスライムの触手が生えていた。
『くっくっ、バカめ。油断したな』
油断してるのはそっちの方!!
私はボストロールの死角に入り込み、変化するとわかっていたその触手目掛けて、鉄の爪を装備していた利き手を思いきり振り下ろした。
ザシュッ!!
『ぐああっ!!??』
確かな手応え。ルークに教えてもらった鉄の爪の使い方が身に付いてきた証拠だ。
触手を両断されたボストロールは、悲鳴を上げながら数歩後ろに下がる。意表を突かれたのか、背後にいるナギに気づいていないようだ。
ガンッ!!
再びナギの放つチェーンクロスが、見事にボストロールの後頭部にヒットした。その衝撃で魔物の身体が、今度は前によろめいた。
『こ、この……!!』
プライドを傷つけられたかのように、顔を真っ赤にさせて憤怒の形相を見せるボストロール。いつの間にか触手ではなく元の腕に戻っているが、斬られた場所からは紫色の血が噴き出している。
「よく気づいたな、あいつがあの杖で身体を変化させてるって」
「もしかしてナギも気づいてたの?」
声をかけてきたナギに、私は少し驚きながら返す。心外だと言わんばかりに、ナギは口を尖らせた。
「さすがにミミズみたいな腕に変わる瞬間は見抜けなかったけどよ。お前が気づいてなかったら、あいつやられてたかもな」
そう言って吹っ飛ばされたユウリに視線を向けると、幸い受け身を取ってたのか、平気な様子ですぐに立ち上がっていた。
そしてナギの視線に気づき、私とも目があった。一瞬ではあるが、睨み付けられたような気がした。
「けど、お前のおかげで確信したぜ。あいつは変化の杖に頼った戦い方をしてる」
耳打ちされたナギの言葉に、私は小さく頷く。
「きっとユウリもわかってたはずだ。それを踏まえたうえで、『作戦B』をやろうぜ」
『作戦B』。それはここの部屋に入る前に打ち合わせをしていたときに思いついた作戦の一つだ。万が一に備えて、牢屋を出るときにユウリが発案した。その場しのぎの作戦のため、ネーミングが安直なのは仕方がない。
「ユウリにも伝えた方がいいかな?」
「できればな。無理ならあいつが自力で気づいてもらうしかねえ」
そう言い終わるとナギは、私から離れた。チェーンクロスを振り回し、再度ボストロールに向かって突っ込んでいく。
私も作戦を実行するために、ナギとは別の方向からボストロールに近づくことにした。
『貴様ら……、ただで済むと思うなよ!!』
するとボストロールは、今度は自身の顔に向かって変化の杖を振りかざした。光を放つとともにボストロールの顔が、別の魔物の姿に変わって
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