第四章 (2)
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一瞬、頭が空白になった。
「……仕事って……?」
「バイトみたいなもんだ」
紺野さんは、モスグリーンのメッセンジャーバックを開けて、小型のノーパソを取り出した。最新のモデルだ。『Bigin』のボーナス商戦特集で見たことがある。僕が持ってるような、でかくて重い、旧式のやつじゃない。…いいなぁ、ボーナス…バイトもボーナスが出ればいいのに。
「今日のことで分かった。お前は使える。いい拾い物をしたよ」
「……買いかぶりだよ」
「心配するなよ。お前向きの仕事だ」
電源を入れると、画面を僕のほうに向けた。驚くほどの速さで起動したノーパソの画面に、青に近いほど澄んだ、銀色の髪をした美少女が浮かび上がった。液晶もクリアできれいだなぁ……。僕の、黄色く濁った液晶画面とはえらい違いだ。貧乏所帯でごめん、ビアンキ。
体にフィットした、水着のような白いドレスを彩るのは、青く輝くダイオード。どことなく「硬質」な、肌の質感。背景は『マトリクス』のような電脳空間。燐光を放つ少女は、徐々に輪郭をはっきりさせながら、目を上げた。
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「これは……」
「俺のMOGMOG、「ハル」だ」
「へぇ…初めまして、ハルちゃん」
付属のカメラが、少し動いた。興味深げにズームを繰り返したあと、
「……ビアンキのマスター、姶良ですね」
………へ?
「あぁすまん、びっくりさせたな。ハルには話して聞かせてたんだよ、お前のこと」
「…それで、多分僕が姶良だって、憶測して声をかけたの?」
「『憶測』機能だ。他のMOGMOGには備わっていない、特別な能力」
紺野さんは、指先を軽く組んで僕のノーパソに視線を落とした。
「お前のMOGMOGにも、同じ能力が備わってるはずだ」
「まさか…!」
弾みで「まさか」などと言ったものの、思い当たる節があった。インストールして2日目の、あの事件のときだ。
添付ファイルを消されて慌てて学校に舞い戻った僕が、へとへとになって帰ってくることを予測して、気を利かせて「僕の気に入りそうな」サイトを見繕ってくれていたんだ。
…まぁ、気を利かせる方向性はだいぶ間違ってるんだけど…
「…なんで?」
「追求しない約束だろう」
「あ、そうか」
特別な能力か知れないけど、その能力をもってしても、うちのビアンキはロクなことをしないですよ。一体誰に似たんですかね…そう言いかけて、珈琲を一口すすった。
「で、仕事って?」
「あるMOGMOGを、探してほしい」
「MOGMOGを探す?…そんなこと出来るの?」
人のMOGMOGには干渉しない。それが、MOGMOGの世界の決まりごとだったはずだ。
「もちろん、干渉は出来ない」
ノーパソを自分の手元に引き戻すと、紺野さんはキーボードの下のパネルをな
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