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くらいくらい電子の森に・・・
第四章 (1)
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る。
「…なるほど。でもそれが、どうして俺が特別なMOGMOGをインストールした、って結論に結びつくんだ?MOGMOGはそれぞれの環境に応じて成長するんだ。柚木ちゃんのとお前のMOGMOGが多少違うのは当たり前じゃないか」
「サイズが3倍以上あるのも、成長の結果当たり前…?」
「………!」
紺野さんから反論がないことを確かめると、先を続けた。
「一応、着せ替えツールの重さも確認したけれど、精々300MBってとこだった。じゃあ残りの容量は、一体何に使われてるのかな…」

「はは……完・璧な人選ミスだったよ。もっと『ゆるい』奴だと思ってたのに」

……高らかに、言い放った。

「…そう?」
僕は顔を上げなかった。
声色で分かる。いま僕の頭上で、紺野さんが「本性」をさらけ出した表情を浮かべているに違いない。僕の、彼の中でのポジションは、今はっきりと『カモ』から『敵』に変わったのだ。

「……で?なにか要望があるんだろ」

奇妙に間延びした声。プレッシャーを与えつつ、相手に探りを入れたいとき、人はこんな声を出す。…僕の中の何かが、ゆっくり冷めていった。あーあ、紺野さんに嫌われちゃったなぁ、折角面白そうな人だったのに…などと、場にそぐわない呑気なことを考えながら、僕は珈琲を一口すすって、ソーサーに置いた。
「…いや、別に」
「………は?」
「どうだっていいんだ。紺野さんが僕に近づいた理由なんて。いろいろ楽しかったし。本当だったら、この件も気がつかない振りをするつもりだった。だけど」
「………」
「柚木は、面倒なことに巻き込まないでほしいんだ」
返事がないので、目を上げて紺野さんを見た。……思いのほか、硬い表情を浮かべている。意外だった。紺野さんはこういうとき、余裕の薄ら笑いを浮かべて、思いがけず掴んだ僕の弱みをがっちり握りなおす…そう思っていた。
「今日、柚木に会ってなにかソフトを渡すつもりだったんでしょ」
「ああ…」
「……柚木のパソコンにも、何かするつもりだった?」
紺野さんは指先を組んで顎を乗せると、にやりと笑った。
「……だったら、どうするつもりだ?」
「柚木に話をして、注意を促すよ」
「まだ柚木ちゃんに、話してないのか……?」
「今話す必要、ないだろう。怖がらせるだけだ。…柚木に、なにする気だったの?」
紺野さんは、俯いたまま顎から手を離し、珈琲を一口すすった。表情が見えない。…やがて、紺野さんの肩が小刻みに震えだした。
「くくく…お前、柚木ちゃん好きなんだ?」
「……こっちの質問に答えようよ」
「ばーか。…お前に渡したMOGMOG着せ替えソフト…あれの「通常版」を渡そうとしただけだ」
「通常版…?」
「お前、いま自分で言っただろ。自分のMOGMOGは特殊だって」
「あ、認めるんだ」
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