第30話前半
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ーーー地球防衛軍 総司令部にてーーー
「おぉ……〈ヤマト〉が、やってくれたか」
〈滅びの方舟〉が崩壊してゆく姿を、連合軍将兵達は歓喜の声を挙げていた。
そんな最悪の時間が嘘のようだった。これで、地球のみならず、ガミラス人、ミドガルド人、全宇宙の生命が、脅威から解放された瞬間だった。
「これで、我々も安心ですな」
だがしかし、そんな空気を打ち壊すのが、平然と居る軍需産業のオブサーバー達。
「だが、この戦争で失われた戦力の規模は、計り知れない」
地球人オブサーバーが吐露する。
「なに、我々には時間断層がある。人材に困ったらクローン兵の製造に着手すればよい。時間断層ある限り、戦力は直ぐに整う」
ガミラス人オブサーバーが、命を軽んじた発言を口にするも、彼自身は気にもしていなかった。
「そうですな。此方側の3年が、時間断層では30年の月日が経過しますし」
「そうだとも。我々の軍事力に適う勢力など、存在しなくなったも同然。我々の優位を覆すことは絶対にない」
「それもそうですな」
「「「「ハハハっ!」」」」
そんな会話を直ぐ傍でされる藤堂の表情には、露骨な嫌悪感が浮かんでいた。隣の席に座るペネット大統領も露骨な嫌悪感を浮かべているが、あの芹沢ですら嫌悪のそれを浮かべている。
機械の補充は良いが、人間はどうするのだ。
人間は自然に生み出され、人生を生きていくのだ。失われた人材は簡単に戻らない。
ミドガルドのクローン兵だって同じだ。簡単には戻らないし、何よりも彼女らも自分達となんら変わらない人間だ。
「(…所詮はビジネスによる金儲けしか頭にないオブザーバーめ)」
これはアレか、お説教を垂れても馬の耳に念仏というやつか。
ふと、藤堂は思う。
そういえば、ミドガルドオブザーバーである彼女は一言も地球・ガミラスオブザーバーに同調してはいなかった。
「(彼女は…ミドガルドは我が地球の復興支援を行っている。ガミラスも復興支援してくれているが、ミドガルドはそれ以上だ。ミドガルドの利益が黒字だろうが赤字だろうが、だ)」
藤堂は感謝の念を抱いた。
そして、である。
軍需産業オブサーバーの支援や協力を受けている野心溢れる芹沢は勘違いされやすい男だと藤堂は思う。
「(…本当に、勘違いされやすい男だな。『子供達の明日の為に!』、か。…いったいどこが野心溢れる男なのか)」
芹沢という男は、誰よりも地球を想い愛し、そして子供達を愛しているのだ。
彼らに同調するような姿勢や発言はあるにはあったが、内心では呑気な会話をするミドガルドを除くオブザーバーへ怒っていることは、藤堂は誰よりも知っている。
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