第一章
[2]次話
崩れた劇場
その劇場は歴史のある劇場だった、数多くの有名な俳優や女優それに歌手達が出演し高名な劇団や楽団が使用していた。
そうした場所だった、だが。
「戦争が起こるとな」
「どんなものでも破壊されるけれどな」
「この劇場までか」
「空襲で破壊されたな」
「破壊されたとは聞いていたよ」
劇場支配人のミハイル=コズイネンやや小柄で白くなった髪の毛が前からかなりなくなっている丸いグレーの目でスーツを着ている彼は残念そうに言った、戦争が起こって劇場のスタッフ達と避難していたのだ。
それで戦争が終わって戻ってきてだ、瓦礫の山になり果てた劇場を見て言うのだった。
「けれど実際にこの目で見たら」
「がっくりきますね」
「もう何もないですよ」
「只の瓦礫ですよ」
「歴史ある劇場だったのに」
「建物自体もよかったんだがね」
コズイネンは苦い顔でスタッフ達に応えた。
「それがだよ」
「この有様ですからね」
「最悪ですよ」
「何て言ったらいいか」
「どうしたらいいか」
「戦争は終わったよ」
コズイネンは今度はこの事実を話した。
「我々に平和が戻った、それならだよ」
「復興ですね」
「戦争でボロボロになりましたからね」
「国全体がそうなりましたから」
「だからですね」
「そうだよ、まずは頑張ろう」
戦争で荒廃した国土の復興にというのだ。
「そしてそのうえで」
「劇場もですね」
「復興するんですね」
「そうしますね」
「今の我々には何もない」
コズイネンは苦い顔で言った。
「戦争は終わったけれど人手も何もかもがだよ」
「ないですね」
「本当に」
「お金もものも」
「そして人手も」
「けれどやるべきことは多い」
復興に向けてというのだ。
「劇場どころか」
「国全体がそうなので」
「俺達の劇場がどうなるか」
「わかったものじゃないですね」
「けれどやっていこう」
絶対にというのだ。
「ここで何もしないではね」
「はじまらないですからね」
「やっていきましょう」
「国のことも劇場のことも」
「それこそ何でも」
「そうしていこう」
こう言ってだった。
コズイネンも他のスタッフ達も復興に向けて動きはじめた、国家全体がそれにかかった。戦争で荒廃しきった国土をだ。
元の美しく豊かなものにしようと働いた、瓦礫をどけて農地を戻しビルも建て直した、国債を発行し重機を揃えて人手もだった。
国全体から集めた、食べるものも不安視されたが何とか切り詰めてぎりぎりで食べていった、そうしていき。
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