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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
XV編
第221話:導きの笛吹き
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大人しくさせればいい?」
「まずは、あの首元の奴を何とかするべきだろう」
そう言って輝彦がハーメルケインの切っ先で指した先には、ミラアルクの首筋に張り付いている虫の様な何かの姿があった。ここに連れてきた時には気付かなかったので、本人も知らない内に何処かに隠れていたのだろう。それが本部と言うあちらからすれば敵陣のど真ん中に潜り込んだ時点で動き出した。なかなかに厭らしい手口だ。
「そう言う事なら……父さん、一瞬で良いからアイツの注意引き付けられる?」
颯人がウィザーソードガンをガンモードに変形させながら訊ねる。それに対して輝彦はハーメルケインの腹で左手を軽く叩きながら答えた。
「誰に物を言っている」
「仰る通りで。じゃ、頼んだ」
颯人の言葉を合図に、輝彦が一気にミラアルクに肉薄した。素早い動きで接近した輝彦に、ミラアルクもブーメランで対抗しようとするが次の瞬間彼女の視界から輝彦の姿が掻き消えた。
「ッ!?」
魔法も使わずにミラアルクの視界から姿を消したトリックは実に単純で、彼は僅かな体捌きでミラアルクの視線を誘導し彼女が次に彼が動くだろう先を予見して視線を動かした瞬間にそれと逆方向に動いて消えたように見せかけただけであった。言葉にすれば単純だが侮るなかれ、手品師として鍛えられた彼の体捌きに掛かれば突然視界から消えた様に見せかける事等朝飯前なのだ。
輝彦の姿を見失い動きを止めたミラアルク。その隙に彼は彼女の背後に回り、片腕を捻り上げることで彼女の動きを抑制した。
「颯人ッ!」
今が好機と輝彦が合図を送れば、その瞬間を待っていた颯人がウィザーソードガンの引き金を引く。放たれた銀の銃弾は輝彦は勿論、ミラアルクの体も傷付けないギリギリのところを通って彼女の首筋に張り付いた虫だけを撃ち抜いて見せた。首筋に張り付いていた虫が砕け散った瞬間、ミラアルクは体をビクンと震わせ糸が切れた人形の様に崩れ落ちる。
「う、ぁ……」
「おっと……」
力無く倒れそうになるミラアルクを輝彦が咄嗟に支える。見ればミラアルクは完全に意識を失っているらしく、目を瞑り静かに寝息を立てていた。その暢気な寝顔に、颯人は思わずその無防備な頬を摘まんで軽く引っ張ってしまった。
「ったく、人の気も知らずお寝んねかい?」
「操られて強制的に戦わされていたようだからな。普段はやらないような戦いに、体力を消耗したんだろう」
「えげつない事をしやがるぜ」
颯人は撃ち抜かれて砕けた虫の残骸を踏みつけ、小さく溜め息を吐く。そこで彼は、先に逃がしたアリスとキャロルの事を思い出し周囲を軽く見渡した。
「あ、そう言えば母さん達今どこだ? 確かハンスの奴が居なくなったって話だけど……」
「ん? どう言う事だ颯人?」
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