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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十七章―双剣―#6
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情が、愕然としたものに変わった。

「…っ抜けない?」
「え?」

 【神剣】が抜けない────?

 名義変更は成功したはずだ。成功して────レド様はこの【神剣】の使い手となったはずだ。【(インサイ)(ト・アイズ)】で視ても、銘はちゃんと【ルガレドの剣】となっている。

 名義変更して確認したときには、引き抜くこともできたのに────


 後退した魔獣が再びこちらへと踏み出したのが目に入って、私はそこで思考を中断する。

「今は考えている時間はありません」

 レド様の【神剣】が使えないというのなら────

「私が【聖剣】を使います」

 私は左手に握ったままだった太刀を、【誓約の剣】に替える。

 あの棍棒が、【聖剣】にでさえ耐えられる【(プロテ)(クション)】が施された【霊剣】を、どうして砕くことができたのかは解らないが────おそらく【聖剣】ならば、少なくとも折られることはないだろう。

 【聖剣】を使うことにリスクはあるけど、まだ魔物たちに囲まれた状態だ。
 今なら人目につく可能性も低いし───見られたからといって、必ずしも、これが【聖剣】だと見破られてしまうわけではない。
 なるべくなら、人前では使いたくないというだけだ。

 レド様は、一瞬、悔し気な表情を浮かべた後───すぐに表情を戻して、【神剣】を弓に替えた。

≪リゼを中心に戦う。リゼの援護を≫

 レド様がラムルたちに【念話(テレパス)】で指示を出すのを聴きながら、私は魔獣に向かって地を蹴った。


◇◇◇


 とにかく、あの棍棒さえ破壊できれば、魔獣を討つのは容易になる。

 レド様たちが、矢、短剣、あるいは魔術や魔力の刃を、それぞれ魔獣に浴びせる中────私は、闇に沈むようなその黒い棍棒目掛けて、【誓約の剣】を振り抜いた。

 私の太刀を受け止めようと、魔獣が棍棒を振ったが────何か感じるものがあったのか、すぐに強引に棍棒の軌道を変えた。

 太刀は、辛うじて、棍棒の先端を捕らえる。刃が棍棒の端を削り、破片が飛び散った。

 やはり、【聖剣】なら、この棍棒を破壊できるみたいだ。

 私は、今度こそ破壊するために、棍棒を追う。

 魔獣は右足を一歩後退させると、掬い上げるようにして、右手の棍棒で地面を抉った。

 棍棒によって巻き上げられた砂と土が、私の視界を覆った。砂に混じっていたレド様の砕かれた剣の破片が、視界を舞う。

「!」

 避け切れない────そう思ったとき、左方向から強い風が吹いて、土砂が吹き飛ばされた。これは魔法だ。放ったのは、おそらくジグだろう。

 視界が晴れ、私の眼に入ったのは────漆黒の塊。

「!!」

 
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