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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十七章―双剣―#6
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いないのは、【記録庫(データベース)】には情報がないということだろう。

 おそらく、これは────この魔獣が創り出したもの。

 魔獣自体も、改めて視てみる。身体的なスペックは、これまでのディルカリド伯爵が造り上げた魔獣と大差はない。
 内包する魔力量も、通常の魔獣よりは少ないものの、魔物などよりは断然に多く────やはり、理性を失っている様子はない。

 それから────【心眼(インサイト・アイズ)】で捉えた事実がもう一つ。

「レド様、魔獣の持つあの棍棒は【霊剣】のようですが、どうやら既存のものではないみたいです。それと────あの魔獣の正面に【結界】が張られています」

 つまり、あの魔獣は固定魔法の使い手ということだ。そして、それは前世の記憶を持っている可能性が高いということでもある。それも────またしても、エルフとして生きた前世の記憶を。

「…解った。────俺とリゼ、それにレナスで斬り込む。ラムルとジグは援護を」
「かしこまりました」
「御意」

 ラムルとジグの返答を聴きながら、私は対の小太刀を太刀へと再び替えて───レナスは【月虹】を呼び寄せて、左手に携える。

 レド様が手にしたままだった両手剣を抜身の大剣に替えて────ラムルとジグが短剣を左右の手に握って、それぞれ構えた。

 魔獣は、【結界】に護られているからか、右手に握る棍棒は下げた状態のままだ。

 私たちを観察するようなその眼には、知性が覗える。

 そういえば────先程、私が放った【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】は【結界】で防ぐのではなく、身体を半歩逸らすことで避けていた。やけにあっさりこちらの思惑通りになったのは────魔獣の方も、私たちを観察するには視界が暗く、立ち位置を変えたかったのかもしれない。

 最初に動いたのは────ラムルだ。ラムルは、まず右手の短剣を放ち、一拍置いてから左手の短剣を投擲する。次いで、ジグが【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】を発動させる。

 初めに放たれた短剣に穿たれて、【結界】が消え失せた。魔獣は慌てることなく、棍棒を振るい短剣を弾き落とすと、すぐに手首を返してジグの放った風の刃を棍棒で掻き消した。

「【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】!」

 私はレド様とレナスと共に魔獣の許へと奔りながら───棍棒を振るい切って無防備な魔獣に向かって、【疾風刃(ゲイル・ブレイド)】を放った。魔獣が左手を突き出し、掌に小さな【結界】を瞬時に張って、風の刃を弾いた。

 巨体の割にかなり素早い。それに、状況に応じて【結界】の規模を変えるなど、機転も利くようだ。地下遺跡で対峙した、同じくエルフの記憶を持っていたと思われる魔獣よりも、戦い慣れているように感じる。

 まあ、でも、
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