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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十七章―双剣―#3
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─腕時計の機能を利用する、あの機転。

 エデルは、まだルガレドとリゼラと【主従の契約】を交わしていない。魔術も能力も与えられていないのに、初めての実戦でこれだけの戦果を挙げられるとは────さすが、リゼラが引き寄せた人物だ。

(これは、坊ちゃまに進言しておかなければ…)

 私情に囚われて、エデルを逃してしまうことのないように─────

 そんなことを考えながら、カデアはナイフを対峙する暗殺者の胸に刺し込む。

 気づけば、暗殺者の残りは6人まで減っていた。そのうちの一人───先程からさりげなく指示を出しているリーダーと思われる暗殺者だけは、情報を吐かせるために、生け捕りにするつもりだ。

 カデアは、残った敵との位置関係やエデルの動きなど────現況を素早く確認し直してから、頭の中でその手順を組み上げつつ────次の標的に向かってナイフを突き出した。


※※※


 カデアとエデルが出て行き────取り残されたラナは、眼前に映し出された玄関ポーチ前の映像を、不安げに見つめた。カデアの指示通り、【聖域】を発動したけれど────侵入される可能性はほぼなくなったというのに、不安が燻っていた。

 傍らのノルンには、動じている様子はない。


 不意に邸を囲う連中が、動き出した。画面の手前で背を向けているエデルとカデアに、暗殺者たちが迫り来る。

 それは、まるで自分が襲われているかのような錯覚を催し────ラナは恐怖を覚える。降り注ぐナイフはカデアの作り出した魔力の壁によって阻まれたものの、身体の奥底から凍っていくような感覚に浸食された。

 どく、どく────と嫌な音を立てて、心臓が高鳴る。

(怖い……)

 画面の奥に向かってカデアが飛び出し、カデアと対峙した暗殺者があっけなく倒れた。

 それは留まることなく、カデアの周辺にいた暗殺者が次々と倒れていく。ラナの眼には捉えることができないだけで、カデアが本領を発揮しているに違いない。暗殺者たちは、カデアに対抗することもできていないように思えた。

 だから────大丈夫なはずだ。

(きっと、大丈夫────大丈夫だ…。カデアさんが負けるわけがない……)

 ラナはそう自分に言い聞かせたが────これが扉一枚だけ隔てた所で繰り広げられているのだと思うと、どうしても恐怖は(ぬぐ)えなかった。

 ラナが恐怖を押し止めようと目を瞑ったとき────瞼の向こうで光が迸ったのを感じた。反射的に、瞼を開く。

「!」

 そこには、リゼラと共に戦場にいるはずのハルドがいた。ハルドは、だらりと下げた右腕を左手で押さえ、苦し気に表情を歪ませている。ケガをしたのだと、一目で悟る。

「腕をやられた!治してくれ!」

 
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