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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二十七章―双剣―#2
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たかったが、仕方がない。こちらから打って出る。ヴァイス、セレナとネロを頼む」
「了解した」

「セレナ」
「はい…!」

 セレナさんが短杖に魔力を流し始める。私たちの前方にそれぞれ20cmほどの魔術陣が、ぽつぽつと現れる。セレナさんは魔力を流し続け、魔術陣が数を増していく。

 私の加護を得て【魂魄の位階】が上がったセレナさんは、技能として昇華した【魔力感知】と【魔力操作】により、自分の魔力を制御できるようになっている。

 周囲180度に満遍なく魔術陣が浮かび上がって、ようやくセレナさんは魔術を発動させた。すべての魔術陣から氷刃が飛び出す。

「行くぞ!」

 氷刃が魔物たちに降り注いでいる最中、レド様が叫び────私たちは、弾かれたように、城壁側へ向かって駆け出した。


◇◇◇


 氷刃の雨が降り止んだ直後に、魔物の許に辿り着いた私たちは、それぞれの得物で斬りかかる。

 レド様がその大剣を横凪ぎに振るい正面にいるオークの首を()ね───レド様の右側に並ぶディンド卿とヴァルトさんがオークの額あるいは脳天を目掛けて剣を叩きつける。その側で、ハルドがショートソードを振り被って、氷刃によって膝をついたオークの首を落とした。

 レド様の左側では、レナスが再び刀を【月虹】に替え、魔力を纏った刃で一刀の下、2頭のオークを斬り伏せた。
 【月虹】の魔力を纏った刃は、丈夫な魔物の肌を断つことができるだけでなく、刃渡りを超えた広範囲を斬ることができる。

 レナスの側にいるアーシャが、腰に提げていた双剣を抜き、まずはオークの腰を斬って───(かし)いだ上半身を迎え撃つようにその首を斬り裂いた。アーシャは、残った胴体を避けつつ、また別のオークへと斬りかかる。

 レド様に群がろうとするオークに向かって、ラムルが素早く両腕を三度振るった。ラムルによって投擲されたそれは、匕首(あいくち)のような鍔のない大振りの短剣で────6本すべて外れることなく、それぞれオークの眉間や眼球に吸い込まれるように深々と刺さる。短剣は柄ぎりぎりまで食い込み、オークを絶命させた。
 ラムルが両手に嵌めている漆黒のグローブの掌部分に魔術式が浮かび上がり、オークに刺さっていた短剣がすうっと消える。そのうち2本だけが、ラムルの両手へと現れた。


 この漆黒のグローブは、マジックバッグ───【異次元収納袋】を改造して、ラムルのために創った魔導機構だ。

 ラムルは、【魔力操作】をようやく出来るようになったものの、あまり得意ではなく───能力や魔術の起ち上がりに少し時間がかかるので、【遠隔(リモート・)管理(コントロール)】や【換装(エクスチェンジ)】では、ラムルの技術を十分に活かせない。

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