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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十七章―双剣―#1
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、怖気づいている様子はない。項で括った赤茶色の髪を靡かせ、その緑色の双眸でしっかりとダズロを見ている。

「開門せよ!」

 ダズロは再び身を翻し、側に控える兵士たちに命じた。彼らは、彎月(わんげつ)騎士団に所属する下級兵士で────討伐には参加せず、東門と北門の開閉と警戒を担う。

 はっ───と短く承諾の言葉を返して、兵士たちが門を開けるべく駆けていった。

 ダズロは、騎士としての使命とそれを成し遂げる決意を胸に、少しずつ開かれる門を見つめる。

 扉が開いていくと共に、緊張感も増していき────ダズロの意識は、これから始まる戦いのことで占められていく。

 門が完全に開いたとき、そこに佇んでいるのは、妻や娘たちのことで後悔に暮れる貴族家当主などではなく────その剣術の才覚から“剣聖”と名乗ることを許され、護国を司る騎士団の一つを任されるまでに至った騎士だった。


※※※


 待機場所で焚火に当たっていたガレスは、腰に提げた緩く閉じてあるポーチの隙間から、赤い光が漏れていることに気づき、明滅している魔道具を取り出した。

 これは────魔物の集団の先端が、ルガレドたちが潜伏している地点に到達した報せだ。

「ギルマス、もしかして報せが来たのか?」

 『黄金の鳥』のリーダーであるドギが、察したようで訊ねてくる。

 ガレスと共に、あるいは近くの焚火を囲っていた各パーティーやチームのリーダーたちも緊張した面持ちで、ガレスの返事に耳を傾ける。

「ああ。アレドたちが潜伏してる所に、ついに魔物が辿り着いたらしい」

 ガレスは、イス代わりにしていた丸太から立ち上がった。

「さて、と───楽しい休憩時間は終わりだ。皆に報せて、片付けと準備をしてくれ。くれぐれも焚火の消し忘れはないようにな」

「おいおい、オレたちゃ新人じゃないんだぞ。そんなことわかってらァ」
「そうだ、そうだ。そこらの経験の浅いガキと一緒にすんなや」
「そりゃ悪かった。それじゃ、そこらの経験の浅い奴らに気を付けてやってくれ」
「仕方ねぇな」
「それじゃ、あいつらのとこ戻って準備すっか」

 冒険者たちの軽口をいなして、ガレスはとりあえず自分が当たっていた焚火の始末を始める。

 焚火は全て消してしまわず、ここで待機予定の後方支援を担う仲間たちのために、3つほどは残しておくつもりだ。

 本当は燃え尽きるまで待つ方がいいのだが、今日はそんな時間はない。鍋を吊るすために突き立てていた鉄棒を地面から引き抜いて、スコップを手に取り剥き出しの土を掘って焚火に被せる。

 他の焚火も、ぽつりぽつりと疎らに消えていく。

 幸い、今日は二つの月が満月に近い状態で天に並んでいる。焚火の数が減っても、手元
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