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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#9
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素よりもかなり密度が低いので、そう簡単に【魂魄の位階】は上がらない。それに、せっかく【魔素炉(マナ・リアクター)】を稼働させているのだ。これを使わない手はない。

「それから、皆さんの腕時計に施した魔術【往還】で跳べる【転移門(ゲート)】を、このお邸のものに限定するつもりです。そうすれば【往還】の発動時間も短縮できますから、離脱も容易になります」

 地下遺跡でのように、時間稼ぎのために誰かが身体を張る必要もなくなる。

「奇襲予定地点に【転移門(ゲート)】を設置してありますので、離脱しても回復したら戻って来ることもできます。だから、ケガをして戦闘を続行することが不可能になったら、無理をせず、すぐに離脱してください」

 これは、また戻って来れることが判っていれば、躊躇わずに離脱できるのではないかと考えてのことだ。仲間を戦場に残して自分だけ退却するというのは、やはり気が引ける。


 奇襲に参加予定の仲間たちが私の言葉に頷くのを見届けてから、再びレド様が口を開いた。

「おそらく、魔獣たちは夜陰に乗じて農村へと向かうはずだ。だが、それでは闇の中で戦うことになる。今夜は二つの月が上っていて比較的明るいが、それでも日中に比べたら視界が暗い。騎士や貴族の私兵、冒険者たちは、なるべく夜が明けてから戦わせたい。できれば俺たちもだ。そのために、ヴァムの森周辺───特に街道を、“デノンの騎士”に巡回してもらっている。日は暮れたが、今のところ魔獣たちは警戒して、集落から出る様子はないようだ。夜半を過ぎた頃、巡回する“デノンの騎士”を徐々に減らす。それを好機と見て魔獣たちが集落から出てきたら、退却することになっている」

 魔獣たちの列の後方から攻める部隊に“デノンの騎士”を組み込んだのは、このためだ。

 マセムの村へは距離としては東門が最短だが、今回は北門からマセムの村へと回り込み、村を経由して前方───農村側の待機場所に向かうことになっている。“デノンの騎士”には巡回を任せているので、そちらへ向かうには時間がない。

 前方を担当する冒険者たちは、間に合うように、すでに皇都を発っている。馬車と馬に分乗してマセムの村まで行き、そこからは徒歩で向かう予定だ。

 馬車と馬をマセムの村に置いて行くのは、場所をとるからだけでなく、何かあった場合に村の住民が避難するのに使うためでもある。

 馬車と馬は、サヴァル商会とベルロ商会が快く提供してくれた。それと、ベルネオ商会に頼んで確保しておいた馬も提供している。


「ですが…、魔獣はそれに乗ってきますかね?」

 ヴァルトさんが疑問を口にする。レド様の案を疑っているというよりも、可能性を挙げたという感じだ。

「確かに乗らない可能性もある。相手は、理性を保った魔獣だ
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