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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#8
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──と、一瞬そんな心配が過ったが、それでも確認しておきたいことがあった。

「新しい剣、手に入れられたみたいね」

 ラギとヴィド、それぞれの腰には、真新しいショートソードが提げられている。

 職人さんに意見を仰いで身の丈に合う剣を選ぶよう言い含め、紹介状を持たせて、サヴァル商会傘下の工房に行かせたのだけれど────

「ぁ、うん。鍛冶師のおっさんが色々アドバイスくれてさ。ちゃんとオレに合うやつを選べたと思う」
「ボクもだよ」
「そっか、良かった」

 工房には、後でお礼を言っておこう。

 新しい剣を購入するにあたって、もし手持ちのお金が足りないようなら、こちらで用立てるつもりだったが───ラギもヴィドも、しっかり貯金をしていたらしく、断られてしまった。

 無事にすべてが終われば、討伐の報酬だけでなく、集落を発見した褒賞金ももらえるはずだから、その分を補ってもマイナスにはならないだろう。


「あのさ…、今回の集落潰しには、リゼ姉も参加────するんだよな…?」

 ラギに躊躇いがちに訊かれ、私は眼を瞬かせる。

「勿論、参加するよ」
「そっか、そうだよな」

 ラギもヴィドも、ほっとしたように、少しだけ表情を緩めた。

 ああ、そうか────ラギもヴィドも、不安で仕方がないんだ。

 ラギとヴィドだけじゃない、他の冒険者たちもだ。見回せば、皆、不安を隠せていない。

 無理もない。Bランクパーティーは集落を監視するために従事しているはずだから、ここにいるのは大半がCランク以下のパーティーだろう。

 通常の集落潰しでも場合によっては荷が重いのに、今回、ヴァムの森に築かれた集落は───様相も、規模も、何もかもが前代未聞だ。

「ラギ、ヴィド」

 ラギとヴィドに視線を戻し、私は二人を見据える。

「今回の集落潰しは、確かにいつもと違う。だけど────やることはいつもと変わらない」

 不安や恐怖からくる緊張感は、戦場では必要なものだ────と、私は考えている。でも、それは程度による。度を超せば、足枷になりかねない。

 私は、ラギとヴィドだけでなく、他の冒険者たちにも聞こえるように───何でもないことのように、意識して話す。

「仲間と協力して、魔物を倒す───それだけだよ。オーガやオーク、コボルトの混成だろうと、相対する敵を見定めたら、仲間や敵の動向をきちんと見て、自分がやるべきことをやる。そして───指示が出たらそれに従う。いつもと同じようにやればいい」

 ラギとヴィドの不安気に揺れていた双眸が、焦点が定まったように、はっきりと色を取り戻した。

 周囲の重苦しかった空気も、心なしか軽くなった気がした。少しでも冒険者たちの不安を払拭できたのならいい
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