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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#8
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囲まれている。

 農民の家屋だけでなく畑も擁する農村は、それなりの広さを持つ。何百頭もの魔物を収容することも可能だ。

 それに、当時の王族や王都民の食糧を賄うために造られたので皇都近郊にあり、ここから距離的にもそれほど離れていない。

 そして────そこには、畑を世話する人間がいる。皇都民を養うための大量の農作物も、腹の足しにはなるはずだ。

「農村を…?」

 誰かが────震える声で呟いた。

 冒険者たちに、動揺が広がる。冒険者の中には、皇都郊外の農村出身である者も少なくない。農家は子だくさんなことが多く、跡を継げない子供たちは大半が皇都に出てくる。

 それだけでなく、農村からの依頼も結構あるので、この皇都の冒険者にとっては農村は身近な存在だ。

「リゼ───魔獣たちがどの農村を狙っているか、見当はつくか?」

 レド様に訊かれて、私は答えることを躊躇う。

 これは────きっと、結果を左右する大事な決断へと繋がる。

 地下遺跡でのことが頭を過った。自分の判断に対する不信は───“祝福”に対する恐れは、まだ消えてはいない。

 だけど、それに囚われていては、これから先、自分では何も決断することができなくなる。

 即座に決断できなければ、戦場では命取りだ。

 それでは────レド様を護り抜くことなどできない。

 私は意を決して────レド様にお答えするべく、口を開いた。

「魔獣たちが狙っているのは────おそらく…、マセムの村ではないかと思います」

 マセムの村は───孤児院を【最適化(オプティマイズ)】する際に、子供たちがお世話になったあの農家がある村だ。

「根拠は?」
「まず、マセムの村の位置です。マセムの村は、ダウブリムに通じる街道から分岐する枝道の先にあります。その枝道への入り口は、集落のある遺跡よりも手前───皇都寄りにはなりますが、集落からそう離れてはいません。マセムの村までは、野菜を積み込んだ一頭立ての馬車で、皇都から3時間ほどの距離と聞いていますから───魔獣や魔物なら、大規模な集団であることを考慮して、長く見積もったとしても、精々、その倍くらいの時間しかかからないでしょう」

「だが、リゼ────ヴァムの森付近や街道沿いにあるならともかく、皇都に近い枝道の先にある農村のことなんか、魔獣たちが知っているとは思えないんだが…」

 ガレスさんが、眉を寄せて疑問を口にする。

「いえ、知っている確率は高いと思います。集落を造った魔獣あるいは魔物たちは、あの枝道に入ったことがあるはずですから。その先に農村を見つけていても、おかしくはない」

 私がそう答えると────ガレスさんだけに留まらず、他の参加者も驚いているのが見て取れた。
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