暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#7
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
。遮蔽物も無ければ、常時全方向を見張ることが難しい────無防備の状態です」
「確かに、それでは新天地を探す方が手っ取り早いな」

 レド様は、納得したように呟く。

 ゴブリンは魔力量が少ないだけでなく、二足歩行の魔物の中では最弱だ。大して戦力にならないし、移動速度という面において足手まといになる。

 ゴブリンの服従の度合いによっては、戦力になるどころか、連れ歩くだけで労力を割かなければならない。

 今のうちに腹を満たしておくというのもあるかもしれないが、おそらく切り捨てることにしたのではないかと思う。

「待て────待ってくれ…、リゼ。それは────スタンピードということか?理性を保った魔獣が、複数の変異種とあの数のオーガとオークを引き連れて、スタンピードとか────冗談じゃないぞ…」

 ガレスさんが、貴族も交えた会議の最中であることも忘れ、素の口調で言う。

「“スタンピード”────『魔物の大移動』を意味する言葉だった、か?」

 レド様が知っていたことに、私は少し驚きながらも頷いた。

「はい。魔物は、集落や巣を築いたら規模を大きくして強化することに力を注ぎ、めったに集落や巣を捨てることはありません。ですが、稀に何らかの事情で捨て、新たに集落や巣を築けそうな場所を探して───集団で移動することがあります。それを、私たち冒険者は“スタンピード”と呼んでいるのです」

 頷くだけに留まらず、貴族たちや経験の浅い冒険者への説明も兼ねて、詳しく答える。

「集落を捨てる…」

 レド様は口元に手を遣り、少し考え込んでから────言葉を零した。

「これは────好都合かもしれないな…」

 レド様の発言を受けて、集まっていた視線に伺うような眼差しが混じる。

「ヴァムの森に造られた集落は、塀や見張り台などがなく攻め入りやすいが、集団で連携して戦うには建物が密集している。こちらには、あの状況は不利だ。だが────奴らが自ら出て来てくれるというのなら…、好都合だ」

 レド様は、誰に向けるでもなく────不敵に笑う。

「うまくやれば────こちらが有利な状況に持ち込める」

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ