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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#6
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たとしても、上層部が不在では動かせない」

「へ、兵士がいるかどうかなんて、何故」

「忘れたのか?俺に下級兵士用調練場以外での鍛練を禁じたことを。俺は早朝、下級兵士用調練場に赴き、鍛練をしている。だから────どの騎士団の兵士がこの皇城にいるのか、ちゃんと把握している」

 ビゲラブナは口を“鯉”のようにパクパクと何度も開けては閉めるけど、言い訳が思いつかないのか、言葉は出てこない。

「もういい。────イルノラド公爵、ガラマゼラ伯爵、騎士団の現状はどうなっている?」

 レド様はビゲラブナを見限り、向かいに座るイルノラド公爵とガラマゼラ伯爵に視線を移す。

 冷静に考えたら、成人したばかりで役職も与えられていないレド様には何の権限もない。

 けれど────今のレド様には、従わずにはいられない威厳があった。

 この場にいる者は────少なくとも、ビゲラブナやテーブル席につく者たちは圧倒され、呑まれていた。

「我が虧月騎士団、並びにガラマゼラ伯爵率いる偃月騎士団は、エリアエイナ地帯に駐在しております。殿下のご推察通り、私を始めとする虧月騎士団上層部、ガラマゼラ伯爵を始めとする偃月騎士団上層部は、一部を除いて、辞令式に出席するため一時的に皇都に戻って来た次第です」

 イルノラド公爵が立ち上がり、代表して答える。

「エリアエイナ地帯に?二つの騎士団が常駐しなければならない程の事態なのか?そんな情報は入っていないが。────宰相?」
「いいえ、私にもそのような情報は入っておりません」

 レド様が立ったままのおじ様に視線を遣ると、おじ様はすぐさま答える。

 エリアエイナ山脈の麓に広がるエリアエイナ地帯はエルダニア王国時代からこの国の領土となっているが、エリアエイナ山脈に棲まう土着の民ドヴェルグ族もこの地帯の支配権を主張して────もう数百年以上、小競り合いが続いている。

「辺境伯軍は何をしている?」
「グリムラマ辺境伯軍は、2年前───ドヴェルグ族に大敗を喫して以来、未だ立て直しができておらず機能しておりません」
「2年経っても立て直しができていない────だと?その状態を追及することもせず、唯々諾々と騎士団を差し出しているのか?」

 レド様に睨まれ、ビゲラブナの血の気が引いた顔に脂汗が流れた。

 レド様は怒りを逃がすように、一息()いて、続ける。

「…今は集落の件だ。────イルノラド公爵、彎月(わんげつ)騎士団の現況については知っているか?」
「はい。現在、彎月騎士団団長ゲスミル伯爵以下上級騎士は漏れなく休暇をとり、皇都を離れております」
「休暇?────どういうことだ、ビゲラブナ。この時期に休暇をとることを許したのか?」

「ぁ、う、わ、彎月騎士団
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