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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十六章―黎明の皇子―#3
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で俺に向けられた怒りと負の感情を視ながら…、自分の人生とは何だったのだろうと考えていた。
皇子として生まれたからには、皇太子である兄を助け、国を────民を護らなければと、自分なりに努力をしてきたつもりだった。
だが…、助けたいと思っていた兄上には処刑を望まれるほどに疎まれ、護らなければと思っていた民には罵声を浴びせられ────それまでしてきたことすべてが…、生まれてきたことすら、母上や爺様に迷惑をかけただけで無駄だったように思えて────早くこの人生を終わらせたいとまで思っていた…」

「そんな────」

 レド様にそこまで思わせた第一皇子や怒号を浴びせた民衆───先代ベイラリオ侯爵に、冷たい怒りが湧き上がる。

 できることなら、レド様の“一度目の人生”に乱入して────彼らにレド様の無念をこの手で思い知らせてやりたい。

 私の怒りを察したのか────レド様は、少し嬉しそうに口元を緩めた。

「この記憶が───前の人生で俺が培ったものが…、忠誠を誓ってくれた仲間たちや───リゼ…、お前のために役立つのなら───あの人生は無駄ではなかったのだと思える。あの人生での俺も───報われる」

「レド様…」

「だから、俺の記憶が甦ったことを気に病むことはないんだ、リゼ。俺は、記憶を取り戻せて良かったと────心から…、そう思っている」

 そう言って微笑んだレド様にたまらなくなり、私はレド様の背中に腕を回して────込み上げる感情のまま、レド様を抱き締める。

 レド様は、それに応えるように、私を抱き抱える腕に力を籠めた。

「レド様───教会に施されていた魔術式は前世の生業を読み取るものではないかという私の推論を覚えていますか?」
「ああ」

「今世でのレド様の“神託”は────『英雄』だと、以前、レド様は教えてくださいましたよね。
レド様は“一度目の人生”においてご自分が為したことは無駄だったと考えていらしたみたいですけれど────私の推論が正しいのなら…、前の人生でのレド様は、最期は冤罪で汚名を着せられてしまったとしても────確かに“英雄”だったはずです。
汚名など信じず、レド様が命懸けで護ってくれたことに感謝して────レド様がいてくれて良かったと思った者も、絶対に…、絶対にいたはずです。
ですから…、前の人生でのレド様の努力が────レド様が生まれたことが無駄だったなんて────そんなことは絶対にありません。だから────だから…、そんな風に考えないでください」

 感情が昂ってまた涙が溢れてきたが────それだけは、どうしても伝えておきたくて…、何とか言葉を紡ぐ。

 レド様に強く抱き込まれ、その表情は見ることはできなかったけど────すぐ後に頭上で囁かれたレド様の声音は、負の感情
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