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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#16
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牲にならなければならないのだ────と。

(そうだ───どんな理屈があろうと、納得などできるはずがない────)

 それが大事な者ならば────猶更だ。

 ろくに家庭を顧みず、子が生まれぬまま妻と死に別れた自分と違って───ダズロは、ただ顧みる余裕がなかっただけで、娘たちを大事に思っていないわけでは────愛していないわけではなかったのに。

 それを知っていたはずなのに────自分は一体、何をしようとした?

 それに────ダズロの言っていることは正しい。ダズロの娘たちを殺すことにも、魔獣を放って多くの被害を出すことにも────大義などあるわけがない。


「ファミラは────命は助かったが…、両腕を失った。魔獣にもぎ取られたのだそうだ。ジェスレムの親衛騎士を務めることはもう出来ない。死にはしなかったが、結果的にはお前の思惑通りだ────ウォレム」

 続けられたダズロの言葉で───もう取り返しがつかないのだということを知って────ウォレムは、その事実に打ちのめされる。

「ダズロ…、俺は────」

 何とか口を開いたものの、言葉が続かない。

 何と言って詫びれば良いのか───どう償えば良いのか、ウォレムには解らなかった。

「本当はファミラと同じ目に遭わせてやりたいところだが────癪なことにお前の言う通り…、お前がいなくなれば皇妃一派の思うつぼなのも確かだ。奴らに、彎月(わんげつ)騎士団に続いて、偃月(えんげつ)騎士団までも明け渡すわけにはいかない。今回の件にお前が関わっていたことは────黙秘する」

 ダズロは、悔しげに声を震わせてそう宣言した後────その烈しい怒りを湛えた双眸を、再びウォレムに向ける。

「だが───覚えておけ。ルガレド殿下に───リゼラに手を出すというのなら…、俺は容赦をするつもりはない」

 ダズロのウォレムを見る眼には、親しみなど一片も見当たらない。それは、他人を───いや、仇を見る眼だった。

 ダズロにとって────ウォレムは、もはや友人ではないのだ。

「ダズロ…」
「気安く名前で呼ぶな────ガラマゼラ伯爵」

 ダズロは、凍てついた声音でそう言い置いて、踵を返した。

 何か言わなければ────ウォレムはそう思うものの、何も思いつかない。

 そのまま執務室を出て行くかと思われたダズロの足が止まった。驚いていることが、その背中から感じ取れる。

「貴公は────」

「話は終わったかな?それではお邪魔させてもらうよ────イルノラド公爵、ガラマゼラ伯爵」

 驚くダズロの向こうから、悠々と現れた人物────それは、このレーウェンエルダ皇国の宰相にして、筆頭公爵であるシュロム=アン・ロウェルダだった────
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