暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#14
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ほど難しくはない。

 ラギもヴィドも剣を提げるベルトは巻いていたが、剣は見当たらなかった。

 二人のボロボロのシャツを(はだ)けさせると、あちこちの肌が赤く変色している。腫れ上がっている箇所や、おそらく骨折しているのではないかと思われる個所もあった。

 けれど───それよりも、一番の懸念は腹部だ。魔物もしくは魔獣に殴られたのか、腹部の大部分が赤くなっている。

(これは───もしかしたら…、内臓を損傷しているかもしれない────)

 ラナが【ポーション】を持っていたとしても───【ポーション】では内臓の損傷までは治せない。治せるとしたら、それは【神聖術】だけだ。

 ラナは───おそらく加護を授かっている。それならば、【神聖術】を行使できるはずだ。

「ラナ───二人のケガは思ったより深刻で、施療院では治せないかもしれない…。貴女は、何か治療できる術を持っていない?」

 すべての事情を打ち明けられているわけではないラドアは、遠回しに訊くしかない。

「そんな───わ、わたし…、【治癒】は使えるけど───まだ一度もやったことなくて───それに…、今日は、リゼの魔力は使えないから────」

 ラギとヴィドのケガが深刻だと聞いて───ラナは狼狽え、しどろもどろに答える。

「どうしよう───ああ…、リゼには連絡がとれないし───どうしたら…」
「ラナ、落ち着きなさい」
「…っそうだ───あなたは神なんでしょ?お願い、二人を治して…!」

 ラナが弾かれたように振り向き、ついて来ていた白い神に向かって懇願する。しかし────神の答えは、ラナが望んだものではなかった。

<…それはできぬ。我は再生や浄化はできるが───治癒することはできぬのだ。仮にできたとしても───その童どもには我の神力は耐えられまい。おそらく、跡形もなく消えることになる>

「そんな…!何のための神なのよ…!やっぱり神様なんて当てにならない…!!」

 ラナが悲痛に顔を歪めて、叫ぶ。

 ラナの両親はどちらも、ラナが幼い頃に相次いで病気で亡くなっている。
 ラナの生家は貧しく、ろくに医師に診てもらうことも薬を買うこともできず、両親は長く苦しんだ末────ラナの目の前で、なすすべもなく亡くなったそうだ。

 また目の前で近しい人の命が失われようとしていることで、絶望を感じてしまったラナの心情も解らないでもなかったが────

「ラナ、おやめなさい!貴女が神に縋りたくなる気持ちも解ります。ですが…、神は────神という存在は、貴女が考えるような…、そんな都合の良い存在ではないのです」

 今は“古代魔術帝国”と呼ばれる大陸を席巻していたあの国が()()()()────連綿と受け継が
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ