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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#10
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近い紺色だった。正直、ジェミナ皇妃に対抗するために、こじつけただけに感じる。

 そうなると、ゲレトに関しても────ザレムが、ゲレト自身を見ていたとは────復讐に走るほど愛していたとは、もう思えなかった。

 この男は────先代ベイラリオ侯爵の妄想を借りて描いただけの将来を惜しんで────愛情など伴わない空虚な復讐を企て、そして────魔力を搾取するために実の息子を捕らえ、逃げられないようその手足を無残にも斬り落とした────

(ああ────こんな人を…、ずっと恐れて────こんな人に言われた言葉を信じて…、いつも傷ついて─────こんな人に…、ずっと愛されたいと思っていたなんて────)

 セレナは、改めて───目の前にいる“ザレム=アン・ディルカリド”という存在を見る。

 どうしても消すことができなかった畏怖の念も────先程までは僅かばかりあったはずの愛する息子を亡くしたことに対する同情も────酷い言葉を投げかけられても消えることのなかった肉親としての情も、ここまでの問答で、セレナの中から完全に消え失せていた。

 あるのは────解放感と微かな寂寥感だけだ。

「もういい。お前のような落ち零れと話していても、時間の無駄だ。そこの───ウルドの息子…、確かハルドという名だったな。ハルド、その“落ち零れ”を私の許に連れて来い」

 セレナの傍に立つハルドに、ザレムは居丈高に命じる。

 この愚かな男は、セレナのときと同様、ハルドが問答無用で自分に従うものと信じているのだ。

「断る。あんたはオレたちの主であることを放棄した人間だ。もう命令される謂れはない。今のオレの主は…、この国の第二皇子であられるルガレド殿下と───ルガレド殿下の親衛騎士であるファルリエム子爵リゼラ様だ」

 ハルドは迷うことなく───澱みのない声音で、ザレムの戯言でしかない命令を撥ね除ける。

「それに、お嬢は───いや、セレナ様は…、“落ち零れ”なんかじゃない」

 続いたハルドの言葉に────セレナは眼を見開いた。

 ルガレドに下る際、リゼラの手前、一度だけ“セレナ様”と呼ばれたことはあったが────ディルカリド伯爵家にいたときは、ハルドに“セレナ様”と呼ばれたことはなかった。

 それどころか、ハルドは冷たい眼を向けるだけで、言葉を交わしたことすらなかった。

 共に冒険者をするようになって、徐々に態度も軟化して───ヴァルトに倣って“お嬢”と呼んでくれるようになり───ヴァルトに対するほどではないけれど、会話もしてくれるようになった。

 そんなハルドが、わざわざ“セレナ様”と言い直してから、『落ち零れではない』と────そう言ってくれた。

 過去の───ディルカリド伯爵令嬢だった頃のセ
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