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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#7
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家の一団はすでに聖堂を出て行くところだった。

 ドレアド伯爵家も出入り口に向かって、移動し始めている。

 グラゼニ子爵家は逃げ出したそうにしてはいるものの、共にいるジェスレムが逃げようとしないため、その場に留まっていた。

 素早くそれだけを確認すると───カデアはエデルを促し、舞台下へと飛び降りる。

 聖堂の出入り口は一つしかない。アルゲイド侯爵家の一団に続いてドレアド伯爵家の一団が辿り着き、そんなに広くないこともあって、出入口は詰まっている状態だ。

 これでは────逃げられない。【往還】を使うべきか、カデアが迷っていると────エデルが口を開いた。

「大丈夫だ。端に寄って、じっとしていれば魔獣をやり過ごせるはずだ」

「え?」

 エデルに言われたことが理解できず、カデアは思わず声を漏らした。

「魔獣はオレたちを認識できない」

 エデルは、腕時計を指す。

 もしかして───エデルは【認識妨害(ジャミング)】のことを言っているのだろうか。

「いえ───【認識妨害(ジャミング)】は」
「知能が低い魔物や魔獣には効果がないんだろ────それは知ってる。だが───アンタも、さっきの見ただろ?」
「あ…!」

 そうだ────あの魔獣は、ハンドルを回して壁を開けた。知能はそれなりに高いはずだ。

 それに、確か───ディルカリド伯爵たちに意図的に造られた魔獣は、理性を失っておらず、知能も少し上がっているようだと聴いている。

 それならば────エデルの言う通り、【認識妨害(ジャミング)】の効果もあるに違いない。

 カデアは、エデルと共に───魔獣は勿論、どの集団からも距離をとって壁際に寄った。エデルは足元にゾアブラを下ろして、疲れたように一息()く。


 改めて舞台上を見ると、イルノラド公女は、逃げ出したいけれど逃げられない様子で────ただ、ガクガクと足を震わせている。

 すると、何を思ったのか、イルノラド公女は腰を屈めて、足元に転がっている両手剣を拾い上げた。

 派手な赤い鞘を払い───とても剣術を修めたとは思えない姿勢で魔獣に向かって構えるイルノラド公女を目にして、カデアは公女の正気を疑う。

 ルガレドやリゼラのように、単独で討伐できるのならともかく────この状況の中で魔獣に剣を向けるなんて、襲ってくださいと言っているようなものだ。

「まさか────武具を使う魔物や魔獣が、武具を奪おうとする習性を知らないの?」

 カデアは思わず、呟く。

 しかも、イルノラド公女の持つ両手剣は────古代魔術帝国の魔剣と噂される剣だ。

 魔物は魔力があるせいか、魔剣を知覚するとも聞いたことがある。

 案の定、イルノラ
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