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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#5
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 カデアは隙間に入り込み、どんどん通路を進んだ。

 光が届かず視界が暗くなってきたので、カデアは【遠隔(リモート・)管理(コントロール)】でランタンを取り寄せて───ランタンの灯を頼りに、次々に現れる壁の隙間を縫うように進む。

 何度同じことを繰り返したか判らなくなってきたとき、不意に明るくなり、開けた空間に出た。

 そこは、カデアが出て来た隙間以外は、出入り口の類はなく、吹き抜けの天井付近に明かり取りの窓があるだけだ。

 カデアから左方向の壁の前に、男性が一人佇んでいる。

「エデル!」
「ああ…、アンタか、カデアさん」

 振り向いたエデルを見て、カデアは戸惑った。

 エデルは───射るような鋭い眼をして、剥き出しの刃のごとく冷たい雰囲気を纏っている。

 髪色や眼の色は変わっていないのに───その雰囲気も佇まいも言葉遣いも、自分が知るエデルとはまるで違う。

 夫であるラムルが言っていたことはこれか───とカデアは思い知った。

 情報収集を担う“影”が変装をしているところは何度も見たことがあるし、カデアも変装の基本は修めているが、それは───化粧や服装に頼る部分が大きい。

 エデルの場合は、化粧もしていないし、服装も今朝と同じだ。
 それなのに───表情や仕種、声の出し方、それに姿勢を変えるだけで、こんなにも別人になれるとは────


「アイツら───おそらく、ここから魔獣を入れるつもりだ」
「この壁から?」
「ほら、ここにある───これ」

 エデルは、魔獣を入れるはずだという壁に向かって右側の壁を指す。そこには、洗濯物を絞るローラーに取り付けられたハンドルのようなものが壁付けされている。

「これを回すと、この壁が開くみたいだぜ」

 エデルがハンドルを掴んで、回し始めた。
 壁の向こうで、がしゃがしゃ───と鎖が絡み合うような音が響く。

「ちょ───ちょっとお待ちなさい、エデル。こんな大きい音を出して大丈夫なの?」
「大丈夫、気づかれやしねぇよ。ゾアブラの言うことにゃ、音が外に漏れないよう、壁に色々と細工しているんだと」
「そ、そう」

 エデルは、カデアに答えながらも、ハンドルを回す手を止めない。

 エデルの言う通り、目の前の壁が徐々に持ち上がっていき、壁だったものが半分以上浮き上がると────その向こうにまた空間があることが、見て取れた。

 エデルが屈まずに通り抜けられるくらいまで開くと、エデルはハンドルを回すのを止め、上がりきっていない壁を潜った。

 カデアは慌てて、その後に続く。

 その空間は先程までいた空間と同程度に広く、ちょうど反対側の位置に、同じようなハンドルが設けられていた。こちら側からも開け
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