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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十五章―過去との決別―#5
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抵、参拝には両親が付き添う。

 先程の集団にアルゲイド侯爵とその夫人らしき人物がいたことを、カデアは見逃さなかった。

(坊ちゃまの為にも───アルゲイド侯爵が、命を落とすことだけは避けなければ────)

 反皇妃派が弱体化してしまうのは困る────そんなことを考えながら、カデアは扉を潜って教会内へと踏み込んだ。

 他にも参拝者がいるかもしれないと思い、アルゲイド侯爵家の一団の後を追って聖堂に向かう。

 ルガレドが6歳の時分に訪れて以来だから、18年振りとなる聖堂内を見て、カデアは幼かったルガレドが思い浮かび───感慨にふけりそうになったが、現状を思い出して気持ちを切り替えた。

 聖堂内には、アルゲイド侯爵家を含め、3つの貴族家が待機していた。

 それぞれ、離れた場所に陣取っている。どの貴族家も護衛騎士や侍従、侍女が主人一家を厳重に囲み、当主や参拝者は見えない。

 入り口付近のベンチを陣取っている集団は、アルゲイド侯爵家だと判っているので───カデアは、他の2つの集団が何処の貴族家か探ることにした。

 とはいえ、カデアは現在、【認識妨害(ジャミング)】で姿をくらませているので、ただ近づいて家紋を確認するだけで事足りる。

 カデアは、まず舞台の真ん前を占領するように陣取る集団へと近づいていった。参拝するのは、ご令嬢のようだ。

 眼に痛い派手なドレスを着た化粧の濃い令嬢と、これまた派手なジャケットに身を包んだ贅肉で膨れた父親らしき男───そして、令嬢にそっくりな化粧をした母親らしき女。

 その格好だけで、ベイラリオ侯爵家門もしくは傘下の貴族だと判る。

 近づいて、彼らを囲う護衛騎士のマントに刺された紋章を確認して、それが、ベイラリオ侯爵家門のグラゼニ子爵家だと判明した。

「ねえ、お父様───本当に、ジェスレム様にお会いできるの?」

 何処の貴族家か判ったので離れようとしたカデアの耳に、令嬢のそんな言葉が入り────カデアは足を止めた。

「ああ。参拝の後、お声掛けいただけることになっている」
「それ、本当ですの?」
「本当だよ。この参拝も、ジェスレム殿下直々にお誘いいただいたのだ」

「ジェスレム殿下直々に?まあ────もしや、この子を見初めて…?」
「そうだろう。でなければ、お誘いされるはずがない」
「皇子様に見初められるなんて夢のようだわ…!」
「これで、我が家も安泰ですわね、あなた」

 言葉だけを聞いていると“娘が目上の存在に見初められて幸せにはしゃぐ家族”という印象だが、立ち並ぶ護衛騎士の合間から見える三人の笑みは醜く歪んでいて───権力者に(おもね)ることしか考えていないのが一目瞭然だった。

(ジェスレム皇子が直々に誘った…?今日
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