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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十四章―妄執の崩壊―#1
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っている。

 家族だけでなく使用人にすら、顧みられることのない────まるで自分の存在がないかのように扱われる────そんな生活を、エデルは送っていたのだと考えると────心が締め付けられる思いがした。


「…その“忌み子”というのは、一体何なんだ?俺には───正直、レムトは普通と変わらないように見える。レムトは、三つの月が同時に昇る日に生まれたから、忌むべき子だとされたと言っていたが────」

「そうですわね。結局のところ────迷信ですわ。カイバルス王国が隆盛だった時代だから────もう900年近く前になりますかしら。アルドネ王国の辺境で起こった出来事が元になっておりますのよ。
ある村で生まれた娘がとんでもない魔力を持っていると噂になって、当時の王子がその村に赴いたそうですわ。当時は、何処の国も魔術の研究に力を入れていましたから、強制的に研究に協力させる心づもりだったのでしょう。
娘はまだ幼かったらしいのですけど、病気の母親を一人置いては行けないと抵抗しました。すると────その王子は非情にも娘の母親を殺し、これで一緒に行けるだろうと宣った。
母親の無残な遺体を前にして────娘は、その膨大な魔力を三日三晩に渡って暴走させて、王子は勿論、王子の悪行を止めようともしなかった騎士たちを殺傷し、そして────周辺の村々をも壊滅させてしまったのだそうです。
その娘は、三つの月が同時に昇る日に生まれたらしく────それ以来、王家に連なる者たちは、その日に誕生した子供を恐れるようになったのですわ」


「その娘は、どうなったの?」

 何となくその娘のことが気になった私は、エルに訊ねる。

「それは、伝わっていないけど────魔力を暴走させて、そのまま亡くなったんじゃないの?」
「そう…」

 だとしたら、救いのない────悲しい話だ。

「可哀相よね、その子。悪いのは、その馬鹿王子なのに────未だに“青い悪魔”とか呼ばれて、その事件も“サリルの惨劇”とか言われているのよ。どうせなら、その馬鹿王子の名前とか悪行とかで」
「エル!今、何て────何て言った…?」
「え?」

「何で…、何で────その子は“青い悪魔”なんて呼ばれてるの?」
「ああ、何でも、青い髪色をしていたそうよ」

「それじゃ────“サリル”というのは…、その子の名前?」
「ええ」

 膨大な魔力を生まれ持った“サリル”という名の────青い髪色の少女。

 ディルカリダ側妃に魔力の高さを見出されたという───ディルカリド伯爵家の始祖は“サリル”という名だった。

 エルダニア王国第31代バナドル王の治世は────約900年前だ。

 もし、この二人が同一人物であるなら────【青髪の魔女】は、ディルカリダ側妃で
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