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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十三章―逆賊たちの持論―#1
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ったんだ…。
まあ───確かに、人を選ぶ依頼だよね。
「依頼人のシャゼムだ」
「Bランカーのアレドだ」
「Sランカーのリゼラです」
私たちがそれぞれ名乗ると、シャゼムさんは目を見開いた。こういった雑用依頼を受けるのは、Fランカーが通常だ。
「まあ、いい。それじゃあ、今から言う本を取って来てくれるか?まずは…」
「あ───待ってください、シャゼムさん」
シャゼムさんがそのまま本の題名を告げようとしたので、慌てて止める。
私は、ベルトの後方に括り付けてあるポーチから、マジックバッグを取り出すと、さらに中から、筆記帖と墨果筆を取り出す。
そして───筆記帖のまだ空白のページを開いて、墨果筆と共にレド様に渡した。
「どうぞ、アレド」
「ありがとう、リゼ」
「お待たせしました、シャゼムさん。それでは、続きを」
シャゼムさんは、奇異なものを見るような目で私とレド様を見遣った後───気を取り直したのか、口を開いた。
「…取って来て欲しい本は、9冊だ。それでは、本の題名を言うぞ」
レド様は、シャゼムさんの言葉を漏らすまいと、表情を引き締めた。
「まずは───『皇国史─戦乱期編─』、『英雄列伝』、『グリムラマ地方考察』……」
シャゼムさんは、よどみなく次々に本の題名を挙げていく。
見事に歴史書か、歴史の研究書ばかりだ。シャゼムさんは、歴史研究家なのかな。
レド様は、言われた題名を書き付けると、律儀に復唱してシャゼムさんに確認する。間違っている箇所はないようで、シャゼムさんは頷いた。
「それで───何処から取ってくればいいんだ?この部屋の本棚ではないんだろう?」
レド様の言う通り、この部屋にも本棚がある。
いや、あるというより────私たちが入って来た出入り口と、一ヵ所だけある窓を避け、それ以外の壁は本棚で覆われている。
「勿論、この部屋ではない。どの本が、どの部屋の本棚にあるかは覚えていない。自分で探してくれ」
「…は?」
レド様が、シャゼムさんの言葉に、思わずといった風に零した。
「この部屋以外の何処かだ。それでは、頼んだ」
シャゼムさんは、それだけ言うと───私たちが訪れるまで読んでいたらしい本に、視線を移した。
ええっと、どういうこと…?
◇◇◇
幾つかの部屋を覗いてみて────シャゼムさんの言葉の意味が解った。
どの部屋も、本棚で埋められているのだ。勿論、本棚は様々な本で埋まっている。空だとか、隙間がある本棚は一つもない。
しかも、シャゼムさんの寝室と思われる部屋以外の個室は、本棚が壁に沿って置かれているのではなく、狭い間隔で林立するように置かれていた。
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