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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十章―見極めるべきもの―sideガレス
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れに気づいた1頭のアーチャーが身を乗り出したところをまず射って墜として───あとの2頭は射殺してから、別々に墜ちるよう、射って調整したんだって」

「……人間業じゃないな」
「フェド、お前、できるか?」
「そんな芸当、できるわけないだろ」
「だろうな」

 最初の1頭目はともかく、射殺して───崩れ落ちる前に続けて射るなんて、どんなに手早く矢を放ってもできるはずがない。

「オレたちが協力して1頭倒すところを、単独で───しかも一刀で倒しちまうんだからな」

 一刀のもと倒せるのは、『氷姫』のヴァルトも、ソロのディドルも同じだが、リゼラの場合は、両手の剣それぞれ1頭ずつ、同時にだ。

 それこそ────人間業ではない。


「それなのに、魔術まで使えるなんてさ」
「元々、魔法は使っているらしいことは聞いていたけど───本職より使い熟せるってどういうこと?」
「でも────魔術を使う姿、すげぇ絵になってたよな…」

 その細い右腕を突き出し、魔獣を見据えて佇む凛とした姿に、あの場にいた誰もが見惚れていた。

 特に───魔術を発動した瞬間、その漆黒の髪がふわりと靡き、現れた魔術陣が発した光に照らされたリゼラは神秘的で────目を離せなかった。


「それもそうだけど───あたしとしては、セレナさんを魔獣の攻撃から護ったときの方が印象的だったな。本当───何あれ。下手な舞台俳優より凛々しくて、格好良かったわ」

 セレナも、リゼラ程でないにしても、かなりの美少女だ。

 そのセレナを横抱きにして────魔獣の攻撃を軽々と避けるリゼラの姿は、物語の“姫を護る騎士”のようだった。

 女としては、あんな風に窮地を救われることに、憧れてしまうのだろう。

「オレたちじゃ、とてもじゃないけど、絵にならないよなぁ」
「その前に、誰かを抱えながら、魔獣の攻撃を避けるとか無理ですよ」
「だな」


 グラスを傾けながら、『黄金の鳥』の面々とエイルとジスの会話を聞くともなしに聞いていたガレスは────苦笑を浮かべた。

(リゼ本人は、自分の判断ミスで皆を危険に晒したと思って、落ち込んでたけどな)

 リゼラは、自己評価が低いというより────周囲と認識が少しずれている。その原因は幾つかあると、ガレスは考えていた。

 まずは───かなり早いうちから冒険者として活動していた上、その実力のおかげで昇進が早かったため、同年代とキャリアがずれていることが一つ。

 次に───リゼラに冒険者としての基本を教え込んだ者が、周囲とずれていたことだ。

 そして───他の冒険者から、こうやって遠巻きにされ、孤立に近い状態となっていることが、認識のずれを、いつまでも気づけない駄目押しとなっている。

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