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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十四章―再生と創造―#5
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ただ舞い続ける。

 魂魄の煌きが降り注ぐ桜の花びらと重なり、一層、大叔父の笛の音が鮮明に聴こえた。

 記憶の中の音なのに、清冽なような───物悲しいような笛の音色が、永い時を耐えてきた古の神の哀愁を表しているかに感じられて────胸が締め付けられる。

 どうか────どうか…、あなたの魂魄が────その“禍”から解き放たれますように────

 そして────願わくば…、あなたの魂魄が────新たな命へと成りますように────

 そんな願いも空しく────ついに、私の魔力が底をついたのを【案内(ガイダンス)】が告げた。


守護者(ガーディアン)】リゼラ=アン・ファルリエムの固有魔力が尽きました───
共有魔力に切り替えを開始します…


 瞬時に空になったはずの魔力が満たされ────魔力がまた身体を循環し始めて、手足はまた力と切れを取り戻し、私は────舞う。

 繰り返される、耳の奥に鳴り響く笛の音。

 煌く粒子が、流星群のように────舞い続ける私の視界を流れていく。光の粒子が増えてはいるものの、まだまだ魂魄の半分以上が“禍”に蝕まれている。

 この膨大な魂魄を、小太刀などで斬り裂いて浄化するのだ。正直、無謀かもしれなかった。

 それに───ここにきて、吸い出される魔力量がいきなり増えた。これまでより濃い“禍”が広範囲に広がっているのが見て取れて、私は焦る。

 このままでは、レド様の魔力をお借りしたとしても、間に合わないかもしれない。何か手立てがないか────舞いながらも考える。

(アストラル)(・ヴィジョン)】を発動させて、舞に合わせて周囲を()ていると、この深淵よりも昏い────濃い“禍”が蠢いているのが目についた。

 それはまるで、殻を割ろうとしている雛のような────雪を押しのけて立ち上がろうとしている花のような、そんな────動き。

 あれだ────と思う。それは直感だった。私は【ツイノミツルギ】を振るう手を止めずに────でも、そこへ向かって奔る。

 私は、両の御神刀の刃で、“禍”を一気に斬り裂いた。“禍”は濃く、なかなか消えない。魔力が、ぐんぐん御神刀に吸い込まれていく。

 やっと“禍”が解けるように消え、眩い光の粒子が迸った。

 これは、古の神の魂魄の核だと悟る。

 私は咄嗟に、【ツイノミツルギ】を放して────それに手を伸ばした。それを抱き締め、残った魔力を注ぎ込む。

 お願い────諦めてしまわないで────どうか自分でも抗って…!

 私は、自分が【創造】を発動させていることに、気づいていなかった。ただ、ひたすら魔力を注ぐ。

 無意識にイメージしていたのは────“禍”を焼き尽くす炎
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