第三部
第一話
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「でも……よくあいつらが許可してくれたね……」
「1つ条件を呑むかわりに、面会を許可してもらいました」
「!? 条件って……まさか……」
「……タイプAの実験に協力することです」
椛は少し寂しそうな顔をしながらそう言った。彼女の表情には少しばかり恐怖の文字が残っており、にとりもそれに気づいていたようだった。
「どうして……無理に会いにこなくても……」
「心配だったんで……それに……これも」
そう言って椛は一枚の紙を渡した。そこには、走り書きだったが心温まる言葉がびっしりと書かれていた。
「これは……」
「雛さんからです。向こうの看守さんの提案でこれを書いて渡そうとしてたんですが……他のやつらが許可しなくて……それで私が……」
「! そんな……ごめんね……」
「私が決めたことですから……その手紙、きちんと持ってて下さいね」
「……うん」
「では……私はもう行きます。しばらく……会えなくなると思います」
「……さよならじゃないよね? また会えるよね?」
「はい。いつか……また……」
椛はかるい笑みをしたまま部屋を出ていく。にとりはその背中が見えなくなるまでずっと見守り続けていた。
「ありがとう……椛……」
そういった少女は、さっきとは違う少し明るい笑みをこぼしながら再び涙を流していた。
部屋の外では、すでに二人の男が待機していた。
「別れの挨拶はすんだか?」
「別れではありません。いずれまた会えます」
「けっ……いつにもまして強気だな。まあ、そんな口調も……もうできなくなるがな」
「……」
椛は銃を背中に付きつけられながら歩き始める。恐怖心と悲しみから逃げ、表情を変えまいと必死に努力しながら刻一刻と迫る運命の時に向けて進んでいく。
(にとりさん……文さん……)
複雑な思いにかられながらも、一歩一歩足を前に出していくのであった。
霧の湖拠点周辺
「さてと……あれが拠点か?」
霧が立ちこむ中、うっすらと写る大きな何かを指さしながら少年は言った。
「ええ。あそこが霧の湖にある拠点よ俊司君」
「あそこににとりさんが……」
「はやく助けてやらねぇとな」
「よし、準備が出来たら突入するか」
そういって、俊司は首をポキポキと鳴らしていた。
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