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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第五章―夜会とお披露目―#1
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ンクを取り寄せると、非常用の固焼きパンと調理用ナイフと皿を一枚、中から出し、ナイフでパンを4分割して皿に並べた。

「【潜在記憶(アニマ・レコード)】検索───【抽出(ピックアップ)】───【顕在化(セットアップ)】」

 思い描いたのは、近所の“ケーキ屋さん”で売っていたものだ。

 “コンビニ”のものも結構美味しかったが、このケーキ屋さんのは、バターの味がより濃厚で生地もしっとりとしていて────お金に余裕がある時はこちらを買うようにしていた。

 光が収まると、パンの欠片は、見事に4つのフィナンシェへと変貌していた。

「これは、パンではないよな?」
「ええ。『フィナンシェ』というお菓子です。ちょうどいいので休憩にして、お茶でも飲みながら、一緒に食べませんか?」
「いいのか?」
「勿論です。今、お茶を淹れますから」

 いつものお茶を淹れようとして、思い止まる。どうせなら、この能力で“紅茶”を出してみよう。この世界には緑茶やハーブティーなどはあるが、紅茶はないのだ。


 厨房のテーブルで、レド様と二人、紅茶を飲みながら、フィナンシェを(つま)む。

「……こういうのもいいな」

 紅茶もフィナンシェも美味しいと言いながら味わっていたレド様が、ぽつりと呟いた。

「そうですね。サンルームで色々用意してお茶するのも良さそうですけど、こんな風にちょっと一休みするのもいいですよね」
「ああ。───でも、サンルームでちゃんとお茶するのも、今度やりたいな。リゼとなら楽しそうだ」
「ふふ、いいですね。後で計画を立てましょうか」

「……記憶から料理や菓子を再現するのは、俺にも出来るだろうか」
「あれは私の特殊能力というわけではないので、多分、出来ると思いますが…」
「それなら、カデアの作ってくれた白梨のケーキを、リゼにも食べさせてやりたいな。あれは、とても美味しかった」

 “カデアさん”というのは、皇妃によって解雇された侍女だそうだ。料理は彼女が作っていたらしい。

「それでは、試してみましょうか。その“カデアさん特製の白梨のケーキ”は、サンルームで行うお茶会での楽しみにとっておくとして…、何か他のものを再現してみてはどうですか?」
「そうだな…。何がいいか────」

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