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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第五章―夜会とお披露目―#1
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水には魔力が多めに混じっているので、変換しやすいのではないかと考えたからだ。

「【潜在記憶(アニマ・レコード)】検索────」

 前世の生家では、醤油は地元で造られている瓶入りのものを使っていた。

 コンロ下の戸棚にしまっていて、取り出した時の瓶の感触、重さを思い出す。蓋を開けた瞬間のあの独特の匂い、そして、あの味────

「【抽出(ピックアップ)】───【顕在化(セットアップ)】」

 魔力が、手に持っていた瓶へと流れ込む。瓶の形が微妙に変形していく。

 光が収束した時、手の中にあったのは、思い描いていた瓶だった。

 ご丁寧に、有名な書道家に依頼して書いてもらったという、まるで文様のような『醤油』という文字が入ったラベルまで再現されている。

 中身はどうだろう。蓋を開けてみると、先程思い出したあの独特の匂いがふわっと広がった。スプーンを取り出して、少しだけ注いで舐めてみる。

 うん───あの味だ、ちゃんと醤油になってる。

 【解析(アナライズ)】してみても、記載が調味料になっているし、人が食しても大丈夫なようだ。

「リゼ、それは?」
「これは、刀と同じく、私の前世の故郷独特の調味料なんです。この世界では、似たものさえ見つからなかったから、これが再現できるなんて────本当に嬉しい……」

 焼いたお肉にかけるだけでも美味しいだろうけど、煮付けや照り焼き、唐揚げ────とにかく、作りたいものがいっぱいある。

 これなら、味噌や味醂、日本酒も出汁もお米も、きっと再現できるはずだ。

「他のものも再現出来たら、前世で食べていた料理を作りますから、楽しみにしていてください」
「ああ、楽しみにしている」

 私が子供みたいにはしゃいでいるからか、レド様はちょっと微笑まし気に応えた。

 その後、私はハイテンション状態のまま、立て続けに能力を駆使して、目論見通り、味噌、味醂、日本酒、出汁の再現、そして、麻袋一杯の小麦をお米に変えることに成功した。

「……………」
「リゼ?どうかしたのか?」 
「あ、いえ。正直、調味料を再現するより、料理自体を再現した方が良かったのではと、ちょっと思ってしまって……」

 その方が手っ取り早かった気がする…。

「そうか。調味料ができるなら、料理自体再現できるはずだな」
「はい。───まあ、この世界の食材で作ってみるのも楽しそうだからいいんですが。あ、でも、作ることが難しいものをやってみるのはいいかも」

 そうすると、何がいいだろう…。やっぱりスウィーツかな。レド様にもおすそ分けしたいから、あまり甘過ぎないものがいいよね。

 あ、“フィナンシェ”!───フィナンシェはどうだろう。

 私は、自分の中型トラ
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