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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第二章―ルガレドの邸―#3
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ェイクではなく、本当の窓なんだ。やはり本物の陽光を浴びた方が身体にいいということで、俺も母上も決まった時間になると、ここで日光浴をしていた」
「ちゃんと考えられているんですね」

「それで、そちらの両開きの大きな窓は、ダイニングルームに繋がっているんだ。母上は、ここで朝食を摂るのが好きだったな」
「素敵ですね、それ。こんなところで、朝食やお茶が出来たら、気持ち良さそうです」

 レド様の説明を聞きながら、奥へと進んでいく。

 突き当りは小さな畑になっていた。葉物野菜やトマト、キュウリなどが生っている。それから、あちらの花壇を占めているのはハーブだろうか。

「この扉は厨房に繋がっているんだ」
「何て言うか、考えられた配置ですね」
「ああ、俺もそう思う。ここを設計したのは、無名な建築家だったらしいがな。高名な建築家に依頼すると横槍が入りそうだったから、まだ無名でも腕のいい建築家を、爺様が苦労して探し出したんだそうだ」

 正面は地味にしても、中はセアラ側妃の好みに───狭くても住み心地の良い家をコンセプトに設計してもらったらしい。

「それにしても…、本当に古代魔術帝国の技術はすごいな。ここは俺では手入れの仕様がなくて、もう何年も放置していたのに。植えていなかったものも生えているような気がする。蝶や鳥、魚までいたな…」
「花も、季節を無視して咲いていますしね。トマトやキュウリが、すでに生っているのもすごいです」

 しかも、見るからに身が詰まっていて、熟していて美味しそう。



「ここも、エントランスホールと同じなんでしょうか?」
「試してみるか?」

 私が頷くと、レド様が『夜仕様にしてくれ』と誰にともなく告げた。

 すると、天井や壁の窓風のライトが、すうっと消えた。というより、黒くなったというべきか。すぐに、エントランスホール同様、淡い光が一つずつ点灯し始める。

 驚いたことに────それだけではなかった。

 花壇の土や池からも淡い光が飛び出て来て、蛍のようにふわふわと宙を舞い、草花や木々にしなやかに宿る。

 そして───何頭もの蝶が鮮やかな光を帯びて、そこかしこに煌めく粒子を撒き散らしながら、ヒラヒラと辺りを漂う。

 夜の帳を纏い、柔らかくライトアップされる箱庭は幻想的で────私は言葉もなく、感嘆を込めた溜息を()く。

 しばらくの間、レド様と二人、その光景に見入っていた。

 そういえば、と思い、本物であるはずの窓を見る。その窓も窓型ライトのように、星空を映していた。どういう仕組みなんだろう?

「そろそろ、中に入ろう」
「そうですね」

 窓型ライトを昼仕様に戻すと、レド様がこちらを見ずに口を開いた。

「…また、時間がある時に───
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