八十八 雲隠れ
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最初は、優しいおにいさんだと思っていた。
中忍試験でお互い敵同士なのに助けてくれるお人好しの気の良いおにいさん。
恩師であるイルカを思わせる雰囲気に当初、彼女は懐いた。
だからこそ、裏切られた時の破壊力ったらなかった。
優しいおにいさんは敵である大蛇丸の部下で。
それだけでも衝撃的なのに彼は波風ナルから大事な存在をふたりも奪った。
綱手を捜す旅先で仲良くなったアマル、そして――――うちはサスケ。
アマルは自ら大蛇丸のもとへ行ったし、サスケにしてもそうだ。
だがカブトは口がうまく、誰かを唆すのが上手に思えた。
言葉巧みに勧誘したと疑っても仕方のない人物。
波風ナルにとって、薬師カブトはそういう認識だった。
だから―――。
木ノ葉の里を襲撃したペイン六道の本体。
長門を前にして、ナルは一度、殺気を抑え込んだ。
だがそれは、カブトを目の当たりにした途端、ぶり返す。
ぼこぼこ、と九尾のチャクラが殺意と共に溢れ出すのを、歯を食い縛って彼女は耐えた。
顔を俯かせたナルが全身から溢れる殺気を抑え込んでいる最中、その様子を知ってか知らずか、カブトは呑気に長門へお伺いを立てている。
「そんな貴重な話を、僕が聞いてもよろしいんですか?」
穏やかに問いかけるカブトに対し、長門は「構わない」と許可を下す。
そのやり取りを視界の端で認めて、ナルは眉間に皺を寄せた。
長門の過去の話を自分が聞いてもいいのかわざわざ訊ねたことから、ペイン本体とカブトの関係は決して悪いものではない。
つまり仲間なのか。
天地橋で『暁』のサソリの部下のふりをしていたが、結局は大蛇丸の部下だったはず。
それが何故、『暁』のリーダーであるペイン六道の本体と共にいる?
大蛇丸のアジトに潜入した際、再会したサスケに大蛇丸を倒したという俄かには信じがたい話をナルは聞いた。
その際、『暁』へ行くと宣言したサスケと共にカブトは消え去った。
大蛇丸ではなく、やはりサソリの、いや、『暁』の一員だったのか。
それとも……。
疑念が疑念を呼び、益々胡散臭い人物に思えてくる。
嘘で塗り固められているこの男を、ナルはやはり敵であると認識した。
なにしろ中忍試験から因縁のある相手だ。
長門よりも憎悪と殺意を抱くカブトを、今にも殺したくて、身体の震えが止まらない。
今し方、長門の過去を聞かせてもらう流れに持ち込んだのに、ここで暴れたら身も蓋もない。
しかしながら体内を巡る血液の如く、殺意と憎悪が全身を蝕んでゆく。
耐えがたい殺気と衝動を抑え込んでいた彼女は、耳に残る一言を思い出して、ハッと正気を取り戻した。
『おまえを信じている』
九尾化
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