第108話 凶報
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局も清廉潔白な組織ではない。あくどいこともさぞかしやっている。
帝国のスパイだと俺に言ったのは、フェザーンのスパイと言ったところで軍人はピンと来ないと考えたから、かもしれない。軍情報部はフェザーンとのチャンネルを閉ざすことは極力避けたいと考えている。それに隠すまでもなく俺はフェザーン駐在武官としてものの見事に失敗している男だ。より『わかりやすく』チェン秘書官を敵と認識してもらうように言っているだけだろう。
「私は軍人です。見ての通り若輩で過分な地位にありますが、こういう機微にはとんと疎くチェン秘書官が頼りというところもありました。だから中央情報局の方にお伺いさせていただきたいのですが……」
「なんでしょう?」
「皆様は何をお望みなんです? 欲しいものがあったらハッキリと仰っていただかないと、愚鈍な私にはわかりません」
チェン秘書官の身柄を帝国のスパイとして『拘束』したいのであれば、明白な証拠をチェン秘書官の(一応)管理者である俺に提示しなければならない。フェザーンとの通信記録の内容と入金記録でも残っていれば満貫だが、その通信が『どこから』なされたかによって話は変わる。
おバカな俺の手元で得た情報を、もし中央情報局を通じて送っていたとすれば、チェン秘書官は『中央情報局のスパイ』として国防委員会内で活動していたことを公式に認める話になる上、中央情報局の情報漏洩も認めなくてはならない。つまり自分達が傷つかないようにするには、一切合切を秘密にした上で、チェン秘書官を密かに始末する必要がある。
「帝国のスパイであるウーの、現在の居場所をご存知でしたら、教えていただきたい」
そう俺に『お願い』するしかない。正式な要請となれば書面が必要になる上に、証拠も添付する必要があるから時間がかかる上、恥を晒すことになる。内々に処理することが至上命題だ。であれば、チェン秘書官にとっては最悪のタイミングで休暇を出してしまった俺としては、もう少し馬鹿なふりをして時間を稼ぐ必要がある。
「彼女から上がった休暇申請書には、彼女の故郷であるパラトループ星域プルシャ・スークタ星系と書かれておりますが?」
「……まさかそれを本気で信じているんですか?」
「履歴書に書いてある通りでしたからなにも問題はないかと思いますし、往復二ヶ月ならなんとか予算審議の事前調整時期に間に合いますから」
「亡命者とその家族は本籍地を変更することができます。プルシャ・スークタ星系惑星プラクリティは、亡命者の便宜上の本籍地として使われている場所なんです。もしかして中佐はご存じないんですか?」
「そんな裏事情など、私にはどうでもいい話です。私はチェン秘書官を信頼しております」
もちろん知ってても知らんぷりでにっこりと笑って応える俺に、エルトン氏は眉を顰め、ピー
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