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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第108話 凶報
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として、ずっと『使い捨ての駒』として帝国の為に献身するなどありえない。家族が人質に取られているというケースもあるだろうが、そうなれば裏切らないように監視役の人間が必要だ。チェン秘書官が帝国の諜報員と言うならば、それこそお前(ピース氏)が帝国の監視役と疑われてもおかしくないぞ、と俺が言ったのが分かったのか、ピース氏の顔はさらに険しくなる。

「亡命者が帝国に逆亡命すれば厚遇される。それはつい先頃、軍自らが証明したではないか。よりにもよって高級士官がやってのけている」
「勇名天地に轟く薔薇の騎士連隊連隊長と、冴えない国防委員会参事補佐官の秘書では帝国にとっての宣伝価値が全く違うでしょう。ましてやリューネブルク大佐は生まれながらの帝国貴族といった容姿をもつ偉丈夫。そのウー=キーシャオとやらは、到底門閥貴族の深窓令嬢には見えませんが」
「容姿ではなく能力と結果が評価されてのことだ」
「能力が評価されるというのであれば、秘書官に居続けた理由はなんです? 国防委員会付属国防政策局戦略企画参事補佐官と名前は立派でも、内情は単なる国防委員会参事の使い走りでしかない。それこそ中央情報局国外情報部に所属していた方が、余程機密情報にありつけるのではないですか?」
「流石にそれはご自身のお立場を過小評価しすぎですぞ、ボロディン中佐」

 席を立ちそうになったピース氏の右肩を瞬時に左手で押さえつける早業を見せつつ、エルトン氏は俺に顔だけの笑顔を見せて言う。

「補佐官殿は政治家から官僚、軍人、軍関係企業の上層・中堅幹部と顔を繋ぐことができます。その中で中佐が誰と会っていたのか、なにを話したのか。その情報だけでも十分すぎる価値があるのです」
「打ったボールがスライスしてどうしようもないといった話ででもですか?」
「言った相手が『鋼鉄の心臓』と謳われた、名うての元統括安全運航本部長なら尚更です」
 はぁぁ、と深い溜息を吐きながらエルトン氏は、小さく首を横に振る。
「貴方が顔つなぎした相手に、ウーはいつでもアポイントを取ることができる。やる気になれば貴方の名前を騙ることで、相手から金も情報も引き出すことができるのです」

 それが今回の新装甲材騒動に繋がるということだろう。三〇億ディナールも動く取引の音頭を取ったであろうラージェイ爺に、要らぬことを吹き込んだのは俺の名を騙ったチェン秘書官で、事前にその話を上司である第七課ないし中央情報局本体にしなかったことを怒っていると見ていい。そういう点では今回はタイミングがあまりにも悪すぎた。

 つまりそれ『だけ』で怒っているというわけではない。事態の前後で姿をくらましているということで、チェン秘書官が中央情報局の統制を離れ、勤務中に得た情報を持ってフェザーンに逃亡した(ように見えた)ことが問題なのだろう。中央情報
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