第108話 凶報
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く知る相手が何らかの助けを求めている』という話。
俺が手でエルトン氏に謝罪すると、氏も何も言わず小さく頷いて目を瞑って、ジャスミンティーの残りを口に運ぶ。それでも細目でこちらを見ているだろうから、携帯端末の背中を両手で隠しながら表示された文章を黙読すること三度……電源を切って、再び腰のフォルダーに戻した。
「顔色がだいぶよろしくないようだが……何かお身内で大変な事でも?」
目を開いたエルトン氏がそういうくらいだから、俺の顔色の変化は相当だったのだろう。自分でも脳味噌から音を立てて血が落ちていくのが分かったくらいだ。なにか察したのか、エルトン氏は申し訳なさそうな表情でソファから立ち、扉の方へ向かっていく。
「では、私はこれで」
扉の前で小さくお辞儀したエルトン氏に、俺は意を決して告げた。
「あぁ……エルトンさん。チェン秘書官の事ですが」
「え、あ。なにか?」
まさか本当にそのコールだったのか、と本気で驚いた表情を浮かべて俺を見る。しかしこれまで何も喋らなかった若造が、ここに来て急にゲロするわけがない……そう頭の中で瞬時に結論を出し、そして俺の表情を見て……
「……まさか」
「えぇ、そうです。たぶんですが」
俺は引き攣った顔のエルトン氏ではなく、主のいなくなったオフィス付帯のミニキッチンの方を見て言った。
「勇敢なるチェン=チュンイェンは、つい今さっき、この世を去ったと思われます」
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