邪神ちゃんドロップキック
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フロストノヴァのマスター候補、花園ゆりねの家は、木組みの街にほど近い場所に位置していた。
あと十五分も歩けばラビットハウスに着く、そんな場所に立つアパート。そこそこの築年数を物語る風化具合から、一人暮らしの大学生にとってはありがたい家賃なのだろう。
「サーヴァントと二人で住む物件には見えねえな」
コウスケの感想に、ハルトも口には出さずに同意した。
先に進んでいく祐太に続き、ハルトはゆっくりと階段を登っていく。
「……花園さんに、どうして部外者の貴方が会いたいの?」
背後からハルトへ尋ねる祐太の彼女。
加賀香子という名前を教えてもらったが、彼女にとって、ハルトはやはり大学の部外者ということもあって、警戒の対象なのだろう。
「えっと……花園さんの噂を色んなところで聞いて、興味があったんだ。一度是非会って見たくて」
「……そんなの、SNSで情報を集めればいいじゃない。こんなストーキングのようなことまでして」
「俺、そういうのに疎くてさ。それで、同じ大学のコウスケに頼んだんだ」
言い訳としては厳しい。ハルト自身の感覚をうなずかせるように、香子の目線には明らかに疑いが混じっていた。
「そ、それより加賀さんは良かったの? わざわざ来てもらって……」
「あなたたちのせいで祐太がストーカー扱いされたらたまらないわ。監視役よ、監視役」
「監視役……」
明らかに疎まれている。
ハルトはいたたまれない感覚を味わいながら、足を止める。
先導していた祐太が、丁度ドアの前でスマホを確認していた。
「ここだな」
祐太はそのままドアをノックしようとするが、その前にこちらを振り返る。香子、そしてハルトとコウスケの顔を一瞥し、頭を掻いた。
「よくよく考えたら、女子大生の部屋に男三人が訪れるのも中々恐怖だな。香子、どう思う?」
「ありえないわ。私だったら絶対に通報するわね。祐太一人なら全然オッケーだけど」
ハルトとコウスケを睨みながら、香子は吐き捨てた。
完全に嫌われていると感じながら、ハルトは逃げるようにコウスケへ視線を投げる。
一方、コウスケも困ったように眉をひそめた。
だが、そんな二人の状況など露知らず、ガチャリとドアが開く音が聞こえた。
「瀬川先輩。いらっしゃい」
その声に、ハルトとコウスケは慌てて姿勢を正し、新しく現れた人物、花園ゆりねへ向き直る。
「……この人が、花園ゆりねさん?」
ハルトは思わず呟いた。
もし街でもこの格好で出歩いているとしたら、確かに忘れられないだろう。
赤いツインテールと眼帯。そして、その身を包む紅のゴスロリ衣装。どこかの洋館に佇んでいた人形が、突如魂を吹き込まれて動き出したと言われても信じてしまいそ
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