第二話
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る紫を振り払うと、橙に続くように戦線へと去って行った。彼女が見えなくなっても紫は必死に彼女の名前を呼び続ける。しかし何度呼び続けても彼女が戻ってくることはなかった。
「紫……しっかりしなさい。ここでのこったらあの子たちの頑張りは――」
「わかってる!わかってるわ……」
今すぐに追いかけたい気持ちを抑えつける紫。彼女の手は強く握りしめられ、何もできない自分への怒りがあらわになっていた。
「行きましょう。妖夢、先にいって安全を確かめてちょうだい。何かあったら戻るように」
「わかりました」
紫はすぐさまスキマを展開させて妖夢を先に行かせる。数十秒待ってみるが妖夢は戻ってこない。どうやら安全が確保されたのだろう。あとはこのままスキマを通って脱出すればいいだけだ。
しかし白玉楼の主はなぜか浮かない顔をしていた。
「さあ、幽々子」
「私は……いいわ」
幽々子はなぜか笑いながらそう言った。
「なっ……何言ってるの!?」
「だって……私はここの主よ。主がここを離れてどうするのよ」
「馬鹿なこと言わないで! 藍や橙に加えてあなたまで失うなんて……そんなのだめよ!」
紫は幽々子の襟を掴みながらそう言い放つ。しかし幽々子は紫と目をそらしたまま何もしゃべろうとはしなかった。まるで無言のごめんを言い渡すかのように。
「いたぞ!西行寺幽々子と八雲紫だ!!」
戦線を崩壊させた革命軍はもう白玉楼の内部の制圧もほとんど完了し、ついに紫と幽々子が隠れていた部屋まで来ていた。彼らを止めに走った藍と橙はというと……言うまでもない。
「くっ、はぁっ!」
「うわっ!?」
幽々子は扇子を取り出すと、部屋いっぱいの桜吹雪をふかせ革命軍の進攻を妨害する。
「今のうちに!」
「でも幽々子――」
「仕方ないのよ……ね?」
そう言った幽々子は悲しそうな笑みを浮かべていた。彼女の瞳の奥には決意の塊のように光る何かも見えている。きっと彼女は冥界を管理するものとして責任を感じているのだろう。
紫は必死に何ができるか考える。自分の実力なら彼らを倒せるだろうとも考えた。だが実際彼らを倒して彼女を救出出来る可能性など、現状を見れば低い事だと言うのはわかりきったことだ。心のどこかで『自分達なら勝てる・外来人に負けない』なんて考えていた。実際彼らの攻撃は最初は防げていた。しかし今は完全に劣勢へと押し込まれており、幻想郷は少しずつ彼らの手に落ち始めている。
ここは幻想郷だ。彼らにも素質さえあれば能力を手に入れることができるはず。なぜ自分はそのことを考えなかったのか、紫は今になって後悔していた。敗因は……どう考えても慢心だ。
これ以上彼女にして上げれることは何もない。スキマに連れ込もうにも、彼女なら意地でも残ろうとするだろう。
「あの子になんて言ったらいいの
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