1.降谷さんの初陣。
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舌も余裕もない。
……再び彼が私の唇を塞いだ。両手で頬を包み込むようにしてしっかり固定されていて逃げることができない。ふわふわ食まれて、舐めては吸われて、時折とても強く吸い付かれて、何をされてももう全部に驚いて身体が跳ね続ける。
朧げな前世も今世も合わせて初めてなんです耐性なんてかけらもありません。悪かったですね!? 勘弁してください、頭がおかしくなりそうです。
「んん──……っ!!!」
ふっと彼はまた私から顔を離す。すっかり上がってしまった呼吸で必死に酸素を求めるほうほうの体の私に対して、彼はふっと妖艶な笑みを浮かべたのみ。
もう、もう、無理です、無理です、たすけて!
「な、なん、で……こん、な、……ぅあ……っ!」
「きみがほしい」
「ッ……!」
名前や話し方や雰囲気は、降谷さんでも安室さんでもバーボンでもない気がするのに、容姿や声は確かに彼だ。
……トリプルから更に顔が増えていらっしゃるのでしょうか……?
「いき、な……っ、り、すぎ……っやぁ!」
知り合ってそろそろ二週間くらいになると思う。少しずついい雰囲気にはなっていたような気はする。けれど何も言わずに、聞かずに、急に、酔い潰れた隙に……こんな状況、明らかにロミトラ失敗まっしぐらでは……!?
というかロミトラって無理やり体の関係までいかなくても良くない? 想いを通わせたと見せかけるくらいでも良くない? だめなの!?
あっ良い雰囲気程度じゃ取り引きのことについて何にも話す気になれなかった小心者の私が悪いですねすみません。いや、普通、なる? ……そうか、普通ならないからこうなったか……。
「汀は俺が嫌い……?」
囁くように彼が聞く。
「……話、も、しないで、こんな、こと、する、人……きら、い……!」
暴れる呼吸を抑えることができないままやっとのことでそう言ったのに、彼はふっと笑うのです。
「……俺のことしか考えられないようにしてあげる」
「ッ!?」
なんやかんやあって、そして。
私は限界を超えて気を失った。
----------------------------------- case : Furuya
小さな会議室を貸切り、僕の教育係になるという先輩が、お前が目を通したあと処分すると言いながら資料を差し出してくる。
その中身は一人の女性に関するざっくりとした情報だった。
櫛森汀(くしもり・みぎわ) 21歳 〔写真〕
〔出身、学歴等々〕
東都大薬学部薬学科研究員
留学先のオクスフォードは飛び級で卒業。
開発する薬剤がほぼほぼ過剰防衛にあたるとされ成果を認められていない。
その研究成果を売ろうとしているらしき現場を
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