第3部
サマンオサ
真実の鏡
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みるうちに塞がっていく。回復呪文を唱えた様子もない。あの魔物特有の回復手段があるのだろうか。
「なんだよ、あいつ回復まですんのかよ!!」
「長期戦は不利だな。一気にカタをつけるぞ」
ユウリは剣を構え直すと、再びボストロールに向かってダッシュした。すっかり回復したボストロールは、ユウリの存在に気がつくと、振り向き様に棍棒を横に薙いだ。
だがその攻撃は予見していたのか、ユウリは大きくジャンプし、そのまま剣を振り上げた。
『ふん、この程度の攻撃……』
「シーラ!!」
ユウリの声に、まるで事前に打ち合わせでもしたかのようにシーラが反応し、賢者の杖を彼の方に向ける。
「バイキルト!!」
突如、ユウリが手にしている剣の刀身が赤く光り輝く。異変を感じたボストロールの表情が歪む前に、赤い刀身は魔物の身体を両断した。
『ギャアアアアアアアアッッッッ!!』
耳をつんざく魔物の悲鳴が、王の寝室に響き渡る。
「やったか!?」
ユウリのあとを追うナギが、期待に満ちた声で呟く。ユウリの一撃によって真っ二つになったボストロールの身体が、どさりと床に倒れ伏した。
「た、倒した……」
シーラが放った『バイキルト』と言う呪文、それは対象者の攻撃力を倍加させる効果をもつ。攻撃力が二倍となったユウリの一撃が、魔王軍の四天王でもあるボストロールの身体を一刀両断させたのだ。
「やったあ!! さっすがユウリちゃん!!」
ユウリの活躍に、嬉しさのあまりぴょんぴょんと跳び跳ねるシーラ。傍にいたルークも安堵の表情を浮かべている。
「本当に……、倒したんだ……」
実感のわかないまま、私はポツリと呟いた。ヤマタノオロチとの戦闘では、苦戦を強いられつつもなんとか勝てた。だが、今回の戦闘では誰も傷つかず、余裕で勝利することができた。バハラタでのレベルアップが功を奏したのだろう。そこで初めて私は、勝利の余韻に酔いしれた。
その時だった。暗闇の中、微かに羽根が羽ばたくような音が耳を掠めた。風の音かと思いつつも、別段気にせずにいたのだが――。
「……いや、まだだ!」
ボストロールの骸の傍に立ち尽くしたままのユウリが、ポツリと呟いた。
「え?」
「あいつはまだ生きてる!! どこかに気配が……」
ザシュッ!!
「あ……」
シーラの乾いた声が耳に届く。カラン、と彼女の手から、賢者の杖が床に落ちた。
彼女と向かい合せに立っているのは、先ほど倒したと思われるボストロールの姿。そしてそいつとシーラの間に立っているのは、ルークだった。
「??っ!!」
その光景を見た途端、私は絶句した。彼の足元には夥しい血が広がっている。彼の身体は、魔物の手によって斬り裂かれていたのだ。
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