第3部
サマンオサ
真実の鏡
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叫ぶ。その動きは鈍足そうな体型とは裏腹に俊敏だった。向かった先は??シーラだ!!
「ちっ!!」
だが、一足先にナギがシーラをかばい、チェーンクロスで応戦する。がぎんっ、と鎖が棍棒に絡まり、ボストロールの動きを封じる。
「スクルト!!」
続いてシーラの防御呪文。味方単体にしか効果のないスカラと違い、周囲にいる味方全員の防御力を上げるのがスクルトだ。発動した瞬間、身体全体に薄い衣のような膜が張られたような感覚を覚えた。
これなら多少前線に出ても安心だ。ナギがボストロールの動きを封じている間に、私はすぐさまボストロールの死角に入り込んだ。
「はっ!!」
だがそれよりも早く近づいたのはユウリだ。彼の稲妻の剣がきらめくと同時に、ボストロールの腹に一筋の傷が生まれる。
「ちっ、浅かったか」
舌打ちを鳴らすユウリ。一方腹に傷をつけられたボストロールは、その傷を凝視した途端緑色の顔を真っ赤にさせて憤怒した。
『きっ、貴様らああああぁぁぁぁ!!!!』
今まで言葉を話す魔物に何度も出会ったが、これほど素直に感情を爆発させる相手は初めてだった。
怒りを露わにしたボストロールは、持っていた棍棒ごと思い切り放り投げた。絡み付いたままの鎖は勢いよく振られ、チェーンクロスごとナギが吹っ飛ぶ。
「うわあああっっ!!」
チェーンクロスからぱっと手を離し、空中で体勢を整えるナギ。持ち前の身軽さでなんとか着地する。
その間、私がただ黙って眺めているわけもなく、ナギが明後日の方向へ飛ばされたときには、私は魔物の懐まで近づいていた。
「せいっ!!」
私の放った正拳突きが、見事にボストロールの鳩尾にヒットした。しかし思いの外ダメージは少ない。それもそのはず、今私が放ったのは利き手ではない方だったからだ。
それでも多少魔物のバランスを崩すことには成功したらしく、数歩たたらを踏んだ。
『くそ……、たかが虫けらがちょろちょろと……』
忌々しげに私たちを睨みつけるボストロール。苛立った気持ちを解放させるかのように、ドン、といつの間にか拾い上げていた棍棒をその場に叩きつける。その衝撃で、床が一瞬ぐらついた。
??この調子なら、行ける!!
バハラタでレベルを上げた甲斐があった。レベル差のあったシーラもダントツに上がったお陰でたくさんの呪文を使いこなせるようになったし、何より自らの自信に繋がった。そう感じたのは私だけでないようで、他の三人もどこか余裕めいた表情を浮かべていた。
だが??。
『ルカナン!!』
『!?』
唱えたのは、ボストロールの方だった。見た目は明らかに攻撃特化型の魔物だからか、呪文は使えないという先入観を抱いてしまった。その思い込みが一瞬の判断の遅れを招いた。
シーラが掛けてくれたスクルトの効果が切れる。と同時に
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